公式テーマレポジトリとは?
たくさんのテーマが無料で自由に使えるWordPress.orgのテーマレポジトリ。ここに掲載されているテーマはすべて 100% GPL であり、なにも憂慮することなく使用することができ、かつ、厳しいレビューを通過したものが掲載されているため、脆弱性が圧倒的に少なく、データをどこかに無断送信されたり、マルウェアを仕込まれたりする危険性もなく、公式レポジトリにはないものという意味での野良テーマとは違い、心配することなくおすすめできるものです。
公式テーマレポジトリに掲載されるための条件はレビューをパスすること
公式テーマレポジトリには、誰でも自作のテーマを掲載して、みんなに使ってもらうことができます。その際、以下のリンク先にある必須事項を満たしている必要があります。
このテーマレビュー条件については以下で詳しく見ることができます。(25ページ目からが本題です。前置き長くてすみません。)
今回の変化はデモコンテンツ
上記は3月5日のDiffですが、注目は右側(新)の3つめのリスト項目です。
テーマをどのように設定することができるのかを示すために、デモコンテンツを利用することもできます。その際は、スターターコンテンツ、既存のコンテンツ、あるいはインストール・インストラクション指示機能を利用してください。インストール・インストラクションは、サイト訪問者に見えるべきではなく、
edit_theme_options
権限を持つユーザーにのみ見えるようにする必要があります。
とあります。ここで、スターターコンテンツとは、TwentySeventeenをインストールした時に見ることができるもので、でもコンテンツを文章や画像などをコードで表現したものです。詳細は、以下で読むことができます。要望があれば翻訳します。
この他に、Install instructionを活用した方法も利用可能ということですが、この詳細については手元に情報がありませんので、おってお伝えしたいと思います。
テーマレビューの要件は変更の議論が進行中
現在、WordPress Slackの#themereview チャンネルでは、テーマレビュー要件を変更・改善するための議論が進行しています。この議論のベースとしてあるのは、以下のような動機になっています。
- テーマにかかる時間が長すぎる(提出されるテーマが多い。レビュワーが少ない。レビューにかかる時間が長い)。
- 要件が古い。
- WordPress.org/themesの発展にもっと寄与できる要件があり得る
三番目については曖昧な表現ですが、有り体に言えばWordPress.org/themesレポジトリのあり方自体が問題になっているということです。たとえば、先日WPTavernの以下の記事は、Themeisleという会社の”Zerif Liteという公式レポジトリで大人気でビジネスとしても成功していたテーマがレビュー要件を満たしていないということで取り下げられ、売上が大幅に落ちたあと、要件を満たす変更が行われた後戻ってきた”という記事です。
Zerif Lite Returns to WordPress.org after 5-Month Suspension and 63% Decline in Revenue
この記事のコメントにWordPressの創始者の1人でありコミュニティーで最も影響力を持つ人物の1人であるMatt Mullenwegによる以下のコメントがありました。
A better approach would just be to have badges / tags for themes, rather than these draconian requirements. A “portable” tag could indicate that it’s easy to switch to and from a given theme, and demos could be shown with customized content and with default content — then let users decide.
よりよいアプローチとして、厳しすぎる必須の要件を並べて課すよりも、テーマにつけるバッジやタグを用意することかもしれません。テーマを切り替えてもそれまでにユーザーが作ったコンテンツが移動可能であることを示す”Portable(ポータブル・持ち運び可能)”タグがあったとしたら、そしてカスタマイズされたコンテンツとデフォルトコンテンツでデモが表示されているとしたら、そのテーマを選択するかどうかはユーザーに選んでもらえればいいと思います。
補足すると、テーマレビューの必須要件の中には、コンテンツをテーマ独自のフィールドに保存してはいけないとか、カスタム投稿タイプを定義してはいけないという項目があります。これは、そうした機能はユーザーがテーマを切り替えた際に、ユーザーがコンテンツにアクセスできなくなることを防ぐためのものです。WordPressはユーザーのコンテンツがユーザーの持ち物であることを保証したいと思っていて、かつそれがデータベースに存在していればよいのではなく、技術のことが分からないユーザーにとってもアクセシブルであることを確認したいという考え方が背景にあります。
ところが、この項目があることによって、テーマの機能に制限がかかってしまっているということが問題になっています。公式レポジトリに掲載されていないテーマの場合には、ユースケースに合わせたカスタムポストタイプがあったり、トップページを彩るための設定ページがあったりと、テーマだけでできることが多いのですが、これをテーマレビューの必須要件に従うと実現することが難しくなるのです。これを半ば無視する形で実現していたのがZerif Liteというテーマでした(最初のレビュー時には大丈夫だったがあとから機能が追加された)。Zerif Liteテーマは大きな成功をおさめて、たとえばWordCamp Europeに10人ほどの当日ボランティアを会社として送り込むほどに成長していました。多くのユーザーが便利に使っていて、周辺ビジネスが育ち、WordPress全体の競争力工場に寄与していたというプラスの側面があったのにもかかわらずルールがそれを阻んでいるのかもしれないという問題意識があります(Themeisleの場合には他の人たちがやっていないことをやっていたという問題もありますが)。
Matt Mullenwegは過去にも、SquarespaceやWixのトップページでテンプレートを選ぶ画面を見てごらんよ。ユーザーフレンドリーですごいよ。的な発言をしています。
もちろん、テーマレビューチームはこれまでの議論の経緯や守るべき価値があって、上記のような発言によって即座に何かが変わるわけではありません。ですが、WordPressの大きな魅力であるテーマのあり方が変わっていくフェーズにあるのは確かですので、これからも注目していきたいと思います。