https://make.wordpress.org/core/2018/12/04/new-5-0-target-date/
WordPress 5.0 のリリース日は、2018年の12月6日ということになりそうです。Gutenbergというブロックベースのコンテンツエディターの導入がフォーカスになっており、今までもリリースのタイミングについて何度も延期がされたり議論がされたりしてきました。プロジェクト発表からちょうど2年目のリリースということになりそうです。
ただし、
As before, if new information arises that indicates the software is not stable, we will adjust or remove the target date.
という一文(もし、ソフトウェアが安定していないという新しい情報が出てくれば、この日付は延期されたりキャンセルされることもある)が付記されていることから、絶対の確定ではありません。
以下、いくつかのポイントをざっくばらんに。
性急すぎるという声が多い
Gutenbergエディターの完成度から見て、今回のリリース日が早すぎるという声、また、リリース日を決めるプロセス自体に不満の声が上がっています。上記の投稿のコメント欄を見てもそうです。ざっくりとまとめてみると、平均的な声としては、以下のような感じだと思います。
- Gutenberg は本当にいいものだし、WordPressが必要としているもので、進むべき方向だ。
- だけど、完成度が低すぎてまだリリースができない。
- Gutenberg 自体がガンガン変わり続けているので、十分なテストができていない
- 解決されることなく閉じられたり、5.0.1に延期されているチケットが多すぎる
- リリースの3日前に、リリース日を発表するってどういうこと?あと、休日なんだけど。
- こんなに多くのコアコントリビューターが「性急すぎる」「来年の1月にしよう」と声を上げているのに、もう「決めたことなので」みたいな姿勢なのはすごく問題
といった感じです。Gutenbergを含む方向性についての反対は、だいぶ少なくなってきたように思います。その代わりに、日付の決め方、チケットの処理のされ方、権限を持つ人の人選といった、コミュニケーションの方法、リーダーシップのあり方、オープンソースプロジェクトとしてのあり方についての不満の声が、どんどん大きくなっています。
また、12月7日、8日、9日はWordCamp USの開催日であり、8日のアメリカ時間午後には Matt Mullenweg (WordPressプロジェクトの共同創業者、Automattic社のトップ、WordPress 5.0のリリースリード、WordPress Foundationの創始者、WordPress.orgドメインの持ち主、などなど一番影響力のある人)の年に一度の所信表明のような講演が予定されており、そのときに発表をしたいから6日なのか、という考えがみんなの頭をよぎっていることはまた、間違いのないところだということもポイントです。
State of the Word 注目ポイント
前述の WordCamp US における講演には、 State of the Word、略して SotW という名前がついているのですが、僕の思う注目ポイントは2つです。
ひとつは、講演における聴衆の反応です。
Gutenberg、あるいは WordPress 5.0 のリリースについてアナウンスをする際、ブーイングが起こるのではないかという予想もあります。Gutenbergプロジェクトに多くの貢献者がいるので幸せなリリースになるとよいのですが、なんとなく、そう平和にはいかなさそうな感じがします。例年のState of the Wordでは講演の直後に質問タイムがあります。多くの人たちが、ダイレクトに、多くの聴衆の前で自分の声を届けられる場ということで、これまでにも、REST API、アクセシビリティー、サポートするPHPバージョンといった、不幸にも、なかば政治トピック化してしまっていた内容が質問される場となっています。ここで、避難に近い質問が出る可能性もあると思います。今年、僕はWordCamp USにはいかないし、ストリーミングでも伝わってこないものもあると思うので、この場にいられないのは少し残念な気もします。
もう一つは、この先の展開についての発表が含まれるだろういうことです。
大きな文脈としては、WordPressの開発について3つのエリアにフォーカスしましょうという大方針がまずありました。
- REST API
- エディター
- カスタマイザー
がその焦点でした。その中で、Gutenbergはエディターであり、WordPressの管理画面にある機能の中で最もREST APIを活用しているものであり、将来的にはカスタマイザーとの連携・統合が目指されているものですので、まさにフォーカス中のフォーカスと言えなくもないものです。
Gutenberg にとっては、12月6日は第1フェーズの終わりという見方ができます。これまでに明らかにされてきたフェーズとしては、
- エディターとしてGutenberg
- カスタマイザーとの統合
- テーマを作ろう
という3段階が示されていました。1はそろそろ完了させたいということでしょう。カスタマイザーとの統合は実装方法含めて議論も始まっていない状態です。アイディアとしては、ブロックの概念がカスタマイザー上にも展開されるということのようです。また、そのタイミングで、メニューやウィジェットなどの要素もブロックとして扱われるようになっていく模様です。さらに、ヘッダー、フッター、サイドバーやその他の「サイトの中で独立して定義できそうな部分」といったものも、ブロックに収斂されていく方向です。
こうした将来の方向性について、何らかのアナウンスがあるのではないかと思われます。そのためにも、第一フェーズはいったん終わらせたい、という気持ちがあるのではないでしょうかね。知らないですが。
結局なんだったのか
5年後から振り返ったときに、今回のリリースやリリースにまつわる意思決定プロセスの様子がどのように評価されるのかですが、その人の立場によって大きく変わるように思います。
多くの、WordPressを自分のブログやウェブサイトの運営のためのソフトウェアとして使っている人たちにとっては、ちょっとした混乱(コンテンツ崩れたとか、ワークフローが変わっちゃった、プラグインが動かない、画面が白くなっちゃったなど)はあったけど、結局よい方向に来たよね、といことで収まりそうな感じがします。
開発者の人たち、特にテーマやプラグインを作っていたり、クライアントのウェブサイトをかなりカスタマイズしていたりする人たちにとっては、対応に追われた日々として記憶されることになりそうです。
コア、翻訳、デザイン、ドキュメンテーションなどの貢献活動に携わる人たちにとってはどうでしょう。なんというか、WordPressプロジェクトに関わることに意味を変えた出来事、ということになっていくのかもしれません。
リーダーシップとは何か問題
おおげさな小見出しになりますが、僕個人としてはこんなにも多くの人たちが関わるプロジェクトのリーダーシップってどういうのが正しいんだろう?ということを考えさせられている気がします。エディターという、ユーザーがもっとも触る部分についての大きな変化をもたらすためには、多数決では決まらないことが多いのは分かりますし、もっとも影響力を持つ人が批判を覚悟で推し進めるというのもありなんでしょう。ですが、そのプロセスについては、ものすごい疑問があるのも確かですし、コミュニケーションの方法だったり、意見の集約の仕方だったり、オープンな意思決定プロセスということについて、ケアがまったく足りていなかったということは確かなことだと思います。