出版社の株式会社竹書房が2020年1月7日付けで発表したプレスリリースによると、CDNサービスを提供するCloudflareを著作権侵害で提訴したようだ。
漫画村事件を発端とする海賊版サイトでの著作権侵害が世間を賑わせた2018年、CloudflareはWeb業界以外でもその名を轟かせた。それから一年を経て、ついに提訴されるまでに至ったというわけだ。Web業界で制作に携わっていると、「違法行為を働いたのはファイルをアップロードした人であってCDNは関係ないのでは?」と思ってしまいがちだが、この訴訟では竹書房による違法コンテンツ削除の訴えをCloudflareが無視したことに対して著作権侵害幇助として損害賠償を求めるようだ。
本来、サーバーの提供等は直接の著作権侵害行為ではないと判断しておりますが、著作権侵害者に対してサービスを与えることで、簡易かつ大規模に著作権侵害を行える環境を提供していることもまた事実であると考えております。サービス提供者が著作権侵害者に対して厳しい態度で当たり、アップロードに対して適法なものかどうかをチェックし、また万が一違法なコンテンツがアップロードされてしまった場合にも、正当な著作権者を充分に尊重し、著作権侵害の通知を受領後、速やかな削除を行うことが多数の著作権者様を代理する弊社の求めるところであり、その主旨からCloudflare,Inc. に対する損害賠償については最低限にとどめ、今後、著作権侵害を容易には行えなくなる環境整備への道筋となる判決を強く望んでおります。
プレスリリース
この訴訟の妥当性および判決がどうなるかについて予断は差し控えるが、CDNというアップロードしたファイルをネットワーク上でキャッシュするだけのサービスに対してコンテンツの中身に関する責任が発生するとなると、WordPressというコンテンツ管理システム(CMS)を提供する筆者のような人間にとっても人ごとではない。なにせ漫画村はProudly Powered by WordPressだったのだ、被害の拡大に手を貸していないとは言い切れないだろう。
Automatticは以前WordPress.comで陰謀論サイトを閉鎖したために「嘘つき!」「検閲だ!」と喧々囂々の議論を巻き起こしたが、竹書房の提訴も「プラットフォームの社会的責任」という問題について同様の提起を行うものになりそうだ。
出版業界では漫画村の被害額は3,200億円とされているので、こうした動きは今後も活発化していくと考えられる。筆者個人の考えでは、出版産業全体で1兆5,000億なので3,200億円も被害額はないだろうと思うのだが、業界全体が低迷していると犯人探しがしたくなる気持ちはわからないでもない。
昨年は通信ブロッキングが大いに議論されたし、4月に控えた民法改正でも瑕疵担保責任が大幅に変更される。インターネット、そしてWebが社会のプラットフォームとして確立していくにつれ、責任も増えていく。我関せずを貫いてある日突然訴訟を起こされないよう、社会の動向には注意していきたいものだ。
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