以前も紹介した『世界一わかりやすい WordPress 導入とサイト制作の教科書 』をご恵投いただいたのでレビューをお届けする。改訂版ということもあるので、変更点を主にお届けしようと思う。以前のレビューはこちら。
旧版の出版は2017年、ブロックエディターがまだβ版だったということもあり、あまり触れられていなかった。今回はWordPress 5.5対応と銘打たれている通り、すでにブロックエディターが普及した状況で書かれているので、この点は要注目だ。投稿画面のスクリーンショットもすべてブロックエディターのものに置き換わっている。目次を見比べてみると……
旧版
- WordPressをはじめよう
- 必要な環境を整えインストールする
- 初期設定をしよう
- コンテンツの追加・編集とナビゲーションの設定
- テーマとプラグインによる外観カスタマイズ
- プラグインによる機能の追加
- ローカル開発環境をつくろう
- テーマ作成の第一歩〜PHPとテーマの基礎
- テンプレートファイルの作成
- 各種テンプレートファイルの作成
- テーマカスタマイザーの実装
- WordPressを本番環境にデプロイする
- サイトの広報と集客
- サイトの運営と管理
- もっとWordPressを使いこなす・学ぶ
- 付録:逆引きWordPress関数辞典
改訂版
- WordPressをはじめよう
- 必要な環境を整えインストールする
- 初期設定をしよう
- コンテンツの追加・編集とナビゲーションの設定
- テーマとプラグインによる外観カスタマイズ
- プラグインによる機能の追加
- ローカル開発環境をつくろう
- テーマ作成の第一歩〜PHPとテーマの基礎
- テンプレートファイルの作成
- 各種テンプレートファイルの作成
- テーマカスタマイザーの実装
- WordPressを本番環境にデプロイする
- サイトの広報と集客
- サイトの運営と管理
- もっとWordPressを使いこなす・学ぶ
- 付録:逆引きWordPress関数辞典
あれ、変わっていない! そう、ブロックエディターはデフォルトのエディターとして説明されているので、特に紙幅が割かれているわけではない。あえて挙げるなら15章「もっとWordPressを使いこなす・学ぶ」でブロックパターンの紹介やプラグイン(Genesis Custom Blocks)利用によるカスタムブロックの作成、ブロックエディター対応テーマの紹介などだろう。
これは本書がプロ、つまり他人のためにWordPressサイトを作ることを生業とする人々が最初に読む本として書かれていることを考えると納得の構成だ。本書を読めば、よるべなき受託制作の荒波も乗り越えていけるだろう。
また、特筆ポイントとしては、カスタムフィールドについての説明が省略されている点である。なぜ省略されたのかはぜひ本書を読んでもらいたいのだが、カスタムフィールド製造業界が存在するにもかかわらずなぜ省略されたのかはコラムなど隅々まで目を通すと面白い知見が得られるだろう。
申し訳ございません、このリンクは現在利用できないようです。のちほどお試しください。
おまけ・今後の受託業界はどうなる?
これまでの受託制作では、案件ごとにオリジナルテーマを作成することが多かった。スキルベースとしてはHTML+CSSに詳しい人々がカスタムフィールドを使いこなし、高機能なCMSを制作していた、というわけである。
しかし、ブロックエディターによる開発難易度の飛躍的な上昇と表現力の向上によって業界地図はある程度塗り変わってきており、これまでWordPressをカスタマイズできていた人達の中には自分でテーマを作ることをやめ、高機能なテーマの外観カスタマイズだけに注力するケースが増えてくるだろう。クラシックエディターも来年でサポート終了予定(延長はありえる)だし、これまでのやり方を変えざるを得なくなってくる。現在進行中のトレンドは以下のような二極化だ。
- ブロックライブラリやブロック対応テーマを作るほどの技術力がある人々は、テーマ作者になるか、Saas・ホスティングなどのスケールするサービスとの連携を模索する。
- そうでない人々はSnow MonkeyやSwell, Nishiki, Lightningなどのブロックエディター対応テーマをカスタマイズしてクライアントに納品する仕事に移っていく。
前者のライバルはnoteのようなSaasやAdobe Experience ManagerのようなエンタープライズCMS、後者のライバルは #駆け出しエンジニアと繋がりたい である。これは揶揄しているとかではなく、マーケットの発展は低価格帯から侵食していくというセオリーを踏まえての予測である。
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Capital P読者にはWordPressプロフェッショナルも多く、大きな変化の流れを感じている人も多いことだろう。入門書を薦めるさいは、ぜひ今後の変化をふまえた良書を紹介してもらいたい。