翔泳社より『WordPress標準デザイン講座 20 Lessons(第2版)』をご恵投いただいたので、レビューをさせていただく。
さて、つい先日も『WordPressのやさしい教科書。手を動かしながら学ぶ実用サイト作りと正しい運用』についての書評を書いたばかりなのだが、勘のいい読者はお気付きの通り、WordPress 5.0 および Gutenbergのリリースによってちょっとした出版バブルが起きている。大きな変化について知りたいというニーズが発生しているのだろう。
今回取り上げる『WordPress標準デザイン講座 20 Lessons(第2版)』もそうした状況に対応しており、2015年に出版された初版と比較して、Gutenbergに対応する記述が大幅にアップデートされており、ほぼ全体を書き直したようだ。
WordPress標準デザイン講座のターゲット
さて、本書では20ステップのレッスンを行いながら、テーマ作成の方法を学ぶ。当然ながら、そのターゲットとしては、「テーマを作る人」である。具体的には次の通り。
そこで今回は想定読者として「Web制作者を目指す学生さん」や「Web制作会社への入社間もない駆け出しデザイナー・エンジニアさん」などをイメージし、筆者自身が企業サイト制作業務に携わる中で使用頻度の低い「コメント機能」などの解説をあえて外しました。
前掲書
筆者はこれらのターゲットに加え、次のようなものを付け加えたいと思う。
- Web制作は業務として行なっているが、WordPressの案件ははじめてである
- これまでは既存テーマを使ったままブロガーとしてαの地位に上り詰めたが、そろそろオリジナルテーマが欲しい
- WordPressを受託案件として行なっているが、ぶっちゃけGutenbergよくわからない
- Web専業ではない会社でWeb担当者をしているが、なぜかオリジナルテーマを作らなければならなくなった
といったところだろうか。なんにせよ、WordPressテーマを独自に作成しなければならなくなった人にはよい出発点となるだろう。
WordPress標準デザイン講座の内容
本書は20ステップのレッスンにわかれており、テーマはHTMLファイルを元に制作される。なお、このHTMLファイルはCSSまで含めて完成済みなので、その点を気にする必要はない。
- 環境設定(ローカル環境にLocal By Flywheel、エディタにBracketsを利用している)
- PHPおよびWordPress関数、ループの説明
- テンプレート階層の説明
- アイキャッチ画像、ウィジェット、メニューなどのWordPressに特有の機能の紹介
- プラグインの紹介
- 公開作業(サーバーはエックスサーバーを利用)
- その他、Codexなどの情報源やWordPressのTips紹介
さて、実のところは筆者はWordPress制作業界では異端であるいきなりテーマを作り始めるマンなのだが、受託の現場ではデザインが完了したHTMLを納品され、それをWordPress化するということは普通だ。企業案件などでは神南エリアあたりにオフィスを構えるデザインスタジオからいきなりファイルが納品され、顔合わせをしてみるとだいたいオーガニックな服を来た黒縁メガネをかけたシャレオツな人たちが来て、にこやかな笑顔でデザインの変更を断られる、ということもままある。そんなわけで、本書のレッスンはWordPressビジネスの実態に即したリアルなものだといってよいだろう。
たとえば、よくあるヘッダーナビゲーションをWordPressメニューする方法も次のように紹介されている。
HTMLのWordPress化で多くある作業は、まずループなどの部分をPHPとして修正していくる作業だ。実のところ、HTMLを作る側もPug(あるいはEmmet)などを使ってループを作成しているはずなので、その出力結果であるHTMLをもう一度PHPに戻すのはなんだか無駄な気がしないのでもないが、最終的にHTMLで納品されるのだから仕方ない。
ともあれ、実際のWebサイト制作作業ではデザインとプログラミングがわかれていることが多いので、ここら辺が一般的な落とし所になっている。そういう意味で、リアリティのあるレッスンになっている。
WordPress標準デザイン講座の執筆陣
本書の執筆陣は野村圭、石原隆志の両名である。愛知のWordPressコミュニティを中心として活動するユーザーでもあり、ブログなどで情報発信もしているので知っている方も多いだろう。そういう意味で、信頼がおける執筆陣だ。
前回紹介した書籍がWordPress自体をほとんど触ったことがない読者向けのものだったが、今回はテーマ制作を行うもう少し上級者向けの書籍だったと言えるだろう。
「テーマ制作」とひとくちにいっても色々なレイヤーがある。WordPressを自分以外のユーザーのために使うという方は、ぜひ本書を手に取ってもらいたい。
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