さる4月13日、savejploss.com というサイトがリリースされた。新型コロナ(Covid-19)による自粛要請で無駄になってしまいそうな食品・花卉などを販売者が登録し、それを購入する通販マッチングサービスである。特に利用料などは徴収せず、ボランタリーなサービスとなっている。
作成者であるタケシタカズト氏とAtsushi Andoh氏は二人ともWordPressコミュニティのメンバー。サービスがWordPressでできていること、新型コロナのもたらす影響とやや距離のあるWordPressによる社会貢献ということ、サービスのリリースが早かったこと、いくつか興味深い点があったので、両氏にインタビューを行った。
高橋 文樹
それでは唐突にインタビューとなりましたが、よろしくお願いします。
サービス詳細と開発の経緯
高橋 文樹
それでは早速なのですが、このサービスがどのようなものかを説明してもらえますでしょうか? 竹下さん、お願いします。
たけした かずと
このサービスは、新型コロナウイルス(COVID-19)による営業規制や時間短縮、イベントの中止・自粛のために出荷できなくなってしまった食料品、植物などの情報を共有し必要な方へ繋げるための情報共有サイトです。
高橋 文樹
ありがとうございます。たしかにいま自粛で大変なところは多いですもんね。
高橋 文樹
このサービスを作ることになったきっかけというか、メンバー集めのあたりから敬意を聞いてもいいですか?
たけした かずと
サービスを作るきっかけとしては、私の親が飲食店を経営していて営業自粛中であることと、安藤さんの親も農家をされていてレストランへの出荷が減っているという、割と身近に「ロス」を感じる環境下にいるということがありますね。
たけした かずと
メンバー集めに関しては安藤さんとオンライン飲みをしながら、「何かできることがないかな?」というレベルの話から始まりました。
Atsushi Ando
そこから直ぐにサーバ契約&ドメイン取得してzoomで繋ぎながら黙々と組み込む感じでした
役割的にはコードを書かないといけないところは竹下さん、見た目のところは私といった感じです
高橋 文樹
Zoom飲み会で発足というのがいまっぽいですね。いまはサンプル商品として兵庫のたまねぎ 5kgというのがありますけど、これは安藤さんの親御さんを想定したようなイメージですね。
Atsushi Ando
まさしくリアルにうちの玉ねぎ写真ですね
たけした かずと
うちの親とかだと、仕入れてしまった食材とかお酒については本当に困ってましたね。
高橋 文樹
飲食店だと、定期的な仕入れも当然あるでしょうし、日持ちしないものは丸損になってしまいますよね。savejplossでは、デリバリーなんかも対応するのですか?
高橋 文樹
情報サイトだから、「デリバリーをやってます」と書いておくだけでもいいのかな。
たけした かずと
いまのところ、「ロス」が発生しそうな食品とか花に限った情報を共有できるサイトを想定していますね!
たけした かずと
> 「デリバリーをやってます」と書いておくのでもいいのかな。
「ロス」を減らすことが目的なので、ロスが発生しそうなのでデリバリーやってます!というのもありですね。
高橋 文樹
学校給食を納品してる業者さんも大変みたいですからね。どんどん情報を開示していって、困ってる人をつなげられるといいですね。
サービス開発のスケジュール・利用プラグイン
高橋 文樹
このサイト、立ち上がるのがけっこう早かった印象があるのですが、どれぐらいでできたのですか?
たけした かずと
4/11(土)の夜にオンライン飲み会をしていて思いついて
4/12(日)に構築して
4/13(月)にリリース
という感じです。
たけした かずと
whois savejploss.com
でお分かり頂けるかと思いますw
高橋 文樹
WordPressでできているサイトだとは思うのですが、具体的に利用しているプラグインなど、差し支えない範囲で教えていただけますか?
- Admin Menu Editor
- Announce from the Dashboard
- BackWPup
- Colorlib Login Customizer
- Command Palette
- Crazy Bone
- Custom Post Type Permalinks
- Custom Post Type UI
- Disable Comments
- Enable Media Replace
- Gianism
- Insert Headers and Footers
- Intuitive Custom Post Order
- MW WP Form
- MW WP Form Generator
- Native Lazyload
- Nested Pages
- Peter’s Collaboration E-mails
- Peter’s Login Redirect
- Regenerate Thumbnails
- Save JP Loss
- Search Meter
- Show Current Template
- User Role Editor
- User Switching
- WP Mail SMTP
- WP Multibyte Patch
- WP Remove Dashboard Extra Widgets
- WP SVG images
- XO Featured Image Tools
たけした かずと
Save JP Loss
はオリジナルプラグインですね。
高橋 文樹
あ、僕が作ったGianismを使っている!
たけした かずと
はい! 販売者の方にユーザー登録してもらうのが難しいケースがあるようなので、ソーシャルログインを導入するのに使わせていただきました!
たけした かずと
ユーザー登録・商品登録などはリリース後に反応をみながら調整していっている感じですね。
高橋 文樹
こうしたプラグインの組み合わせでサクッとサービスを立ち上げるというのもオープンソースの醍醐味ですよね。
たけした かずと
そうですね!オリジナルプラグインも作りましたが、100行ぐらいの小さなもので機能のほとんどはオープンソースで公開されているプラグインで実現しています。
今後の展望
高橋 文樹
登録情報は今後増やしていきたいのだと思うのですが、なにか考えている案とかありますか?
たけした かずと
まずはこのサービスをもっと知って頂けるようにしないといけないですね。
Atsushi Ando
登録はちらほらあるのですが、スマホでの利用が多いためか、登録画面の操作性が高くない部分があるので改善できないか考えています。
たけした かずと
そうそう、思っていたよりもスマホから登録している人が多い。
高橋 文樹
ユーザーが商品を販売しているような人達だから、完全にモバイルシフトしているんでしょうね。
高橋 文樹
ある意味チャレンジングですが、学ぶことは多そうです。
たけした かずと
ダッシュボードにこんな情報を掲載しました笑
高橋 文樹
「ハンバーガーメニューわからない問題」ですねw
たけした かずと
はい。サービスの改善をしながら勉強をさせてもらっていると感じています。
高橋 文樹
まあ、サービスを改善していくことももちろん大事ですけど、まずは知られないことには始まらないですよね。ここでCapital Pの読者に向けて、メッセージをお二人からそれぞれよろしくお願いします。
Atsushi Ando
公開までのスピード重視でまだ使いづらいところがあるかもしれないですが、少しでも困っている人の情報の発信が容易になりパブリッシングできる環境を届けられればと思っています。
日頃の制作では使わないWordPressの機能や連携サービスを試したり、見直したり良い経験の中、マニュアルを動画にしてみたりとトライしながら、より使いやすいものにして、役立つものになればと思っています。
ここをこうやったらもっと良いよ!やここがイマイチ的なレビューもお待ちしています。
たけした かずと
いろいろ大変な世の中だと思うんですけど、何かアイディアがあったら「まずはやってみる」というのがいいかなと個人的には思っていて、例えこのサイトがあまり使われなかったとしてもいろいろ試行錯誤した経験はきっと、今後の仕事に活かせると思ってます。
あとはやっぱり手を動かすことは楽しいので、何かアイディアがあったら「まずはやってみる」でどうでしょうか?
高橋 文樹
ありがとうございます。じゃあ、まずは読者の皆さんに「こういうサービスあるよ!」ということをロスしてそうな事業者に伝えてもらえるといいですかね。
高橋 文樹
たとえば、安藤さんのように親御さんが農家だとか、そういう心当たりを軸に広めてもらうと。お問い合わせはサイトまで。あ、マニュアルわかりやすいですね。
高橋 文樹
ということで、お二人とも急なインタビューにお答えいただき、ありがとうございました。
たけした かずと
こちらこそ、ありがとうございました!
Atsushi Ando
こちらこそありがとうございました!
いかがだったろうか。新型コロナのもたらす影響は大きいが、WordPressのようなWebサービスなら濃厚接触なしでサービスを提供できる。アイデア次第では社会的に意義のあるサービスを作ることもできるのではないだろうか。オープンソースソフトウェアで社会問題が解決するとしたらワクワクする。筆者もなにか役に立つことをやってみようと刺激を受けた。
インタビューイー紹介
竹下和人
フリーランスプログラマー。システム会社に勤務したのちに独立し、WordPressをはじめとするWebサイト・Webシステム開発を行う。WordPressコア開発貢献・公式プラグイン開発を通じて得た知識をもとに、制作だけではなく運用サポートも行っている。
地元神戸のWordPressやAWSなどのコミュニティ運営にも参加している。『WordPressのやさしい教科書。 手を動かしながら学ぶ実用サイト作りと正しい運用 5.x対応版』の執筆に参加。
Atsushi Ando
ショップ店員、ギタークラフトマン、ストレージメーカーでの製品開発などを経て、2015年からフリーランスとして関西を中心に活動。デザイナー・エンジニアとして活動するかたわら、CMSやAWSのコミュニティイベント運営を多数担当し、その中で得た多彩な人脈を生かしてクリエイティブ制作チームのマネジメントを手がける。ウェブやグラフィック・ITテクノロジーなどの様々なメディアを繋ぎ、一貫したブランド・コミュニケーションづくりで “プレゼンスを世に送り出す“ためのサポートを行っています。
『世界一わかりやすい WordPress 導入とサイト制作の教科書』の執筆にも参加。