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【参加リポート】WordPressの今年を振り返るState of the Word 2024が東京で開催

WordPressの今年を振り返る恒例のイベントState of the Word 2024が去る12月16日、東京は虎ノ門ヒルズのTokyo Nodeで開催された。その参加リポートをお届けする。

2023年のState of the Word(スペイン、マドリード)から本国アメリカ以外で開催されるようになったこのイベント(以下、SotW)は、プロジェクトリードであるマット・マレンウェグの一般教書演説(SOTU=米国大統領の年次演説)的な内容になっている。日本のコミュニティは非西欧圏のコミュニティとしてそれなりの存在感を放っており、また、マット自身が新日家で何度も来日しているため、日本が開催場所として選ばれたのだろう。

#wpdrama?

さて、今回のStoWで多くの人が気にしていたのは「WP Engineの件どうなん?」である。はじめに断っておくと、ノー言及であった。これは「みんなが空気を読んだ」という日本的な現象でもあったろうし、また、そもそもSotWがWordPressコミュニティというよりはマットの、つまりAutomatticのイベントであるということも大いに関係しているだろう。そもそも、マットと敵対している欧米の人はわざわざ東京に来ないのである。「ちゃんとブッ込めよ!」と思っている人のために言っておくと、日本コミュニティの中にも質問タイムに「誰もいかないなら自分が行きます!」と手を挙げた勇者はいたのだが、最後に挙げた二本の手のうち、その勇者の手が選ばれることはなかった。ボクシングを見ながら「そこでジャブ打てよ!」と野次ることは簡単だが、実際にリングの上でガードを解いてパンチを打つことは大変な勇気がいる。筆者は手を挙げた彼/彼女を誇りに思う。

マットの演説

さて、本題に入ろう。会場のTokyo Nodeは港区の夜景を見下ろす大きな窓にディスプレイが映る近未来的なステージだ。

後ろが透けているスーパーオシャレスライド。登壇しているのはマティアス・ベンチュラ。

最初の演説は次の通り。

パネルディスカッションその1

ゲストを招いたパネル・ディスカッションでは、作家の川上未映子とクレイグ・モドが登壇した。

これは筆者が作家だからなのかもしれないが、川上未映子といえば、日本を代表する作家であり、「芥川賞・谷崎賞を取っている」「村上春樹と対談本出している」「ニューヨーカーに翻訳載ったことがある」など、もうちょっと紹介の仕方があったのではないか、と感じた。とりわけ海外の人は「WordPress使ってるその辺の人」ぐらいに思っていたのではないか。前回のWordCamp USではケン・リュウがキーノートに登壇していたが、川上未映子も同じぐらい世界的認知があるのだ。

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そしてもう一人のクレイグ・モドであるが、筆者は日本で一番早くApple Storeで電子書籍を出版して雑誌掲載されたことがある電子書籍元年マンなので、クレイグ・モドの書籍も当然持っており、アフターパーティーでサインをしてもらった。ちなみに、彼は日本在住で、日本語も喋れる。

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パネル・ディスカッションの内容についてだが、やや芯を食っていないような印象であった。「Webサイトでコンテンツを発表することがクリエイティブな原点である」という話をしていたが、川上未映子はWordPressブログを持っていて、それが彼女のキャリアの出発点ではあるのだが、最終更新が2021年だというのが、WordPress(というか、Webサイト)が2024年現在に抱えている問題でもある。マットがパネルで紹介していたアンディー・ウィアーやヒュー・ハウイーといった「Webサイトでコンテンツを発表してそれがフックアップされて大成功を納めた作家」は、皆15年ぐらい前に一斉に出てきて、いまはもう少ない。

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パネル・ディスカッションその2

さて、パネルの第二部は日本コミュニティの大串肇(mgn)と谷口元紀(さくらインターネット)を招き、日本の状況についての討論だった。すでに言及したように、WordPressの国際化には日本コミュニティ(おつかれさん)が大きな役割を果たしており、わぷーやMeetupの前身であるWordBenchなど、についても紹介があった。

日本におけるWordPressの普及率の高さについては、次のような議論が交わされた。

  1. 日本ではそもそもCMSをローカライズして導入するのが活発だった。Xoops, ModX, JoomlaなどたくさんのCMSがローカライズされていた。その中でWordPressは「本家vs日本語」という対立に陥らず、すんなり本家に吸収合体される道を選んだ。
  2. Movable Typeがもっとも人気だったが、有料化したあたりで一気にWordPressにうつった。
  3. KtaiStyleという「WordPressをガラケー対応させる」プラグインが人気に。i-mode全盛かつiPhone登場前夜の、日本のガラパゴスっぷりがピークだった時代ゆえの出来事だろうか。マットも当時日本にきて、電車の中でアンテナの伸びたパカパカ携帯を使ってワンセグ放送を見ているサラリーマンに近未来を感じたそうである。
  4. 日本のホスティング企業の価格競争。なぜか令和に入っても月500円のさくらインターネット。
  5. 日本はブロックエディターの受け入れが早かった。

さて、こうした議論はあくまでポジティブ・バイブスがそれとなく求められる年に一度の晴れの場だからであって、実際のところ、日本でWordPress人気が高いのは別の側面もあると筆者は考える。以下、筆者の見解。

  1. そもそも日本では ElementorやBeaverBuilder、Divi などのページビルダーの知名度が低かった。Gutenbergによってはじめてページビルダーの存在を知った人も多かった。
  2. 日本の失われた30年は伊達ではなく、さくらインターネットをはじめとする「レンサバ会社」の異常な低価格によって、WixやSquare Spaceなどのサービスは「高い」というただ一点の理由で日本市場に食い込めなかった。一風堂のラーメンが3,000円する国のサービスを日本人は使わない。
  3. グローバル進出を狙う企業にとって、日本市場はアジア・パシフィックでは第一の候補にあがるのだろうが、単なる翻訳でない「ローカライズ」をするに値するほどの労力を割いた海外企業がなかったというのが一因ではないか。Wix、Kinsta、Jimdo、といった企業の日本ローカライズチーム(だいたい1人ぐらい)より、ボランティアベースのWordPress日本コミュニティの方がすごかった。これは日本的・町内会的・PTA的労働の成果でもあるが、それでいいのか? という疑問もある。日本コミュニティのメンバーも10名ぐらいボランティアでこのSotWをサポートしていたが、東京都港区の夜景とのコントラストは歪に感じた。そこらへんの公民館で開催して、ギャラを払うのはダメなのか。

以上、あまりポジティブでない要素もまた日本のWordPressの普及率を助けていると思うのだが、読者諸氏の実感はいかがだろうか。筆者は20年後ぐらいに「日本だけまだWordPressを使い続けている! WordPressは絶滅していなかった!」と世界を驚かせる日が来るのではないか、と密かに期待している。


以上、SotWの参加リポートである。マットにもサインをもらったが、拙いカタカナがマットの日本愛を物語っている。他の国の文字を書けるというのは、それだけで愛なのだ。

マシュー(マットの本名)

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