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世界の全ECサイトの39%はWooCommerce。日本での将来性はどうなのか。

Automattic が先日公開した2016 Year Reviewによると、世界中のECサイトのうち、39%はWooCommerceでできているとのことです。

各種情報を少し整理した上で、それを受けて日本のWooCommerceとECがこの先数年でどうなっていくのかなということについて、書いてみます。

Automattic とは

WordPress.com の運営をするアメリカに本社を置く Automattic。WordPress.com は WordPress を中核に据えたブログホスティングサービスで、日本でははてなブログやライブドアブログ、その他アメブロなどを思い浮かべるともっとも近いサービスです。

Automattic の CEO、Matt Mullenweg はソフトウェアとしての WordPress の創始者でもあります。

Automattic は、WordPress.com だけではなく、WooCommerce, Jetpack, Akismet, Simple Note, .blog などのビジネスもやっています。

今回リリースされたレポートは、そんな Automattic 社のいろいろなサービスの数字を公開したものでした。

WooCommerce とは

WooCommerce とは、WordPress のプラグインです。インストールすることで WordPress をECサイトにすることができます。もともとは WooThemes という会社が作ったプラグインでしたが、昨年 Automattic が買収して現在はAutomatticのプラグインとして開発、運営が続けられています。

その特徴の1つに、エクステンションと呼ばれる、WooCommerceに多様な機能を追加する「プラグインのプラグイン」が数多く揃っていることが挙げられます。たとえば、定期的な課金、ペイメントゲートウェイの追加、複雑なクーポン、送料計算、マーケティングツールなど、およそECサイトにある機能については、やりたいことに近いものを提供するエクステンションが存在する状況になっています。エクステンションの多くは有料で、この販売で収益を上げることが WooCommerce のメインのビジネスとなっています。

エクステンションには、WooCommerce が提供しメンテナンス等をしているものの他に、WordPress.org に無料でホスティングされているものやサードパーティーが自社サイトやマーケットプレイスで販売しているものなどもあり、WooCommerceの世界の中だけでビジネスマーケットが成立するほどの規模になっています。

この WooCommerce というプロダクトが、世界で運営されているECサイトのうち39%を占めているというわけです。

39% の根拠は?

39% という数字は、Automattic 及び WooCommerce が自身のサイト上に掲載している数字です。WP Tavern の記事にならって、Builtwith の数字を見るとその数は42%となっています。

Ecommerce technologies Web Usage Statisticsへ進み、右側のChart Dataで”The Entire Internet”を選択すると見ることができる。

ダントツの1位が WooCommerce 42%で、次が Shopify の6%、3位がMagento の 5% です。

ちなみに、TOP1万サイトとすると、WooCommerce は10%となり、以下のような数字を見ることができます。

  1. 12%: Magento
  2. 11%: Oracle Commerce
  3. 10%: WooCommerce
  4. 9%:   Shopify
  5. 6%:   Magento Enterprise, 及び Demandware
トップ1万サイトの場合、10%になる。

WP Tavern によれば、1年半前の Automattic による買収時には 30% だったということで、非常に大きなジャンプとなっているようです。

WooCommerce Powers 42% of All Online Stores

日本での WooCommerce の普及について個人的に思っていること

ここからは個人(@shinichiN)として、所感を書きます。

そもそも、WooCommerce がリリースされたのは2011年11月。バージョン番号が1になり、サブスクリプションエクステンションが出るなど本格化したのが2012年。そこから破竹の勢いで盛り上がっていったように見えていました。2014年にバンコクで WooCommerce のイベントを開催した時には、たった二年でこんなにも有名なプロダクトになるのか!と驚いた覚えがあります。5年やそこらは存在していたものだと思っていました。

2014年にバンコクで実施したWooCommerceについてのイベントの様子。画像はWooCommerceとOmiseの勉強会@バンコクに行ってきた(1) | Tak's Blogから拝借しました。

さて、WooCommerce と日本の状況について僕が考えていたことは「そろそろ条件は揃ってきたのでアメリカ・英語圏と同じような状況になることはあり得る」という感じです。

現在のWordPressをみると、ブログツールやCMSとして世界と日本でのシェアは25%を超えており、デファクトとも呼べそうなくらい大きくなっているような状況です。似たような状況に、日本のECのなかでのWooCommerceの地位が高まるかもしれない、ということです。

では、その条件とは何か。3つあります。

  1. 決済のソリューションが揃うこと
  2. コミュニティが盛り上がり情報の流通量やアクセシビリティが上がること
  3. 翻訳が行われること

の3つです。現在、ほぼできあがっているのが、一つ目の決済のソリューションです。Omise.coStripe.comは日本円での決済を可能にしてくれます。今すぐにでも、WordPress と WooCommerce をインストールして商品を販売することが可能です。他のプレイヤーの話もあるようです。

イベントで話をしてくれた Omise。当時のバンコクでもすごい伸び方をしていた。画像はWooCommerceとOmiseの勉強会@バンコクに行ってきた(2) | Tak's Blogからお借りしました。

次に、コミュニティが盛り上がることを挙げています。それは、ブログの記事が大量になり、イベントがもっとたくさん開催され、書籍などが出るような状況が必要です。これは、ソフトウェアが先かコミュニティが先かというニワトリタマゴ的な状況にはなると思います。コミュニティが盛り上がることは、情報の流通量が増えて目にする機会がどんどん増えることも意味します。たとえば、

みたいな記事が増えることであり、WordBench なのか WooCommerce Meetup 的なリアルのイベントがもっと増えて、登壇できる人もいっぱいいて、LTも盛んになって、というようなことであり、本を執筆できるような人が誕生しているような状態のことです。こうなるとキャズム超えっぽい状況が生まれると思います。

3つ目が翻訳です。これは、エクステンションの翻訳とドキュメントの翻訳、さらに広い意味でのローカライゼーションが含まれます。エクステンションが豊富で便利なことが WooCommerce の魅力であることと、プラグインが豊富で便利なことが WordPress の魅力であることとは相似形をしています。なので、エクステンションがたくさん翻訳されていかないことにはみんなにとっては使いやすいとはいえわけです。

同じことはドキュメンテーション(使い方マニュアル)にも言えます。Automattic に提案したいのは、Wiki でも WordPress でもよいので、有志の人たちがメンテナンスできるような日本語のドキュメンテーション置き場を作って開放するのはどうかなぁ、ということです。今、有志の人がいたとしても手をつける場所がないんじゃないかな?

最後に、翻訳に含めていいのかは分かりませんが、もっと広い意味でのローカライゼーションが必要です。たとえば、姓と名の順番、住所の順番、送料計算、プリントアウトされるべきスリップの書式の整備、国内でよく使われているマーケティングツールとの繋ぎ込みなどです。これらはすべてエクステンションで実装が可能です。

これは僕が2014年に思っていたことです。実施したイベントが WooCommerce x Omise というイベントだったこともあり、当時 Omise が日本でも展開するための準備をしていたこともあり、当時はぼんやりとこうなるのかなぁと考えていましたが、状況はだんだん進んできていて、Omise や Stripe が日本で利用可能になったのがつい最近のことです。この2つは WooCommerce 用のエクステンションがすでにありますし、Amazon Paymentもサービス自体は日本で使えます(英語圏ではWooエクステンションもありますが、それが日本で使えるのかどうかは知らないです)。それから Automattic による買収があり、現在40%ともいわれるシェアを獲得しているということですので、僕は上記のうちの残りの2つが解決されれば、動くことになるお金も大きいですし、大盛り上がりになっている2年後というのも想像に難くないなぁと思っています。

.jp ドメインのオンラインストアに限って、何が裏側で使われているのかを見ると、WooCommerceが19%を占めている。この数字、ちょっと大きすぎるように感じるのだけどどうなのだろう。ちなみにランキングは以下のようになっています。Makeshop34%, WooCommerce19%, EC-CUBE18%, Zen Cart/osCommerce/Magento4%。楽天市場やYahoo! Shopping、Amazonなどのプラットフォーム、BaseやStores.jpなどは含まれていない計算なのかな。

パブリッシングの民主化と、誰でもECサイトを持つ時代の WooCommerce

ちょっと話が大きくなりすぎかもしれませんが、誰もがECサイトを持つ/持てる時代というのが来ます。その時に誰がどういうサービス、ソフトウェアを提供しているのか、という視点も面白いかもしれません。

僕が大好きな映像がこちらです。

http://www.ustream.tv/recorded/50137972

その文字起こしがこちらです。

今後ECに何が起きるのか–絶対に押さえておきたい、ヤフー小澤隆生氏が語る「EC業界の未来予測」 – ログミー

この映像、文章の中で今回の趣旨と合わせて考えたいのが以下の内容です。

例えば農家は全国に140万戸あります。漁業は17万人います。卸業・小売は93万社。製造業は43万社。簡単にすべて20%がインターネットに参入してきます。28万戸・3万人・18万社・8万社。この方々がインターネットで物を売るようになる。

全国で1億2000万人いる国民のうち、約2000~3000万人がインターネットで物を売るようになる。こういう予測を立てております。不用品・手芸や趣味で作られてるもの・釣りで釣りすぎてしまったお魚・箪笥で眠ってるもの。こういったものはもちろんインターネットで販売されるようになる。

この動画と文章はとてもおもしろいのでみなさんぜひ見たり読んだりするといいと思うのですが、WooCommerce と WordPress の性格を考えた場合、上記の市場の拡大と売り手の多様化というのはとても興味深い話だと思います。

つまり、かつては不可能だったインターネット上での簡単な発信すること、自分のドメインで、完全に自由で移動可能なコンテンツの所有することを WordPress が可能にしてきたように、自分のオンラインストアを自分の管理下に置くということを WooCommerce は可能にしているし、日本にもその波が来るかもしれない。

もちろん、SaaS的な形、メルカリのようなアプリの形もあるでしょう。それは、ブログやウェブサイトが WordPress 的なソフトウェアだけではなく、他のブログプラットフォームや、JimdoやWix、Squarespaceなどのウェブサイトビルダーサービスでも実現されていることに似ています。

そういう中小の企業や個人が参入する時にその一部は、自由なカスタマイズということや独立ということを重視するかもしれないという意味で、誰でも物を売る時代に、WooCommerce が大きな役割を果たし、ティップスが出回り、周辺のサービスが充実して、ということが起きてくるのではないかなぁと思います。

まとめ

世界のすべてのECサイトの 40% が WooCommerce というのはにわかには信じがたい数字ですね。もちろん売上ベースで考えたりするとこの数字は変わってくるでしょうが、それでも今、超大きな数字が目の前にあることには変わりありません。

WooCommerce の日本での状況はまだまだ黎明期という感じですね。でも将来が楽しみです。コミュニティと翻訳の今後に期待大であり、そこがなければ広まることもないだろうなという感じがします。

WooCommerce、みなさんはどう思いますかね。コメント欄で教えてください。

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