先日、ドナルド・トランプがアメリカ大統領に就任したのだが、その直後、次のようなツイートが飛び込んできた。
White House website is a silly controversy. It was *replaced*. Same as in 2001, 2009.
What *is* important: takedowns on other agency sites. https://t.co/8yNZdcm4Jm
— Andrew Nacin (@nacin) January 20, 2017
このツイートのメンション先がこちらである。
https://twitter.com/JayFranzone/status/822495562138316801
要するに、トランプ大統領就任早々、「LGBT関連の記事が削除されたのでは?」という疑義が呈されているのだが、Nacinは、単に大統領の交代に伴ってWebサイトがリニューアルされた結果であり、大統領の交代時に同様のことはあった、つまり普通のことだと主張している。過去の記事は別の場所にアーカイブされるようだ。
さて、なぜこんなツイートを取り上げるかというと、はじめのツイートを行なったAndrew NacinはWordPressのリード開発者だからである。
Nacinは現在U.S.Digital Serviceという政府機関に所属しており、オバマ前大統領にも謁見している。
Thank you, Mr. President. It’s truly been an honor. pic.twitter.com/LGH8V4OMij
— Andrew Nacin (@nacin) January 20, 2017
と同時に、NacinはWordPressコミュニティにおいて実質上のトップであり、WordPressのリリースにおいて毎回リード開発者として名を連ねている。その彼が政府中枢機関に勤務し、twitterなどで主張しているという事実は、日本と比較するとなかなか興味深い。
アメリカでは政府によるIT推進がとても進んでおり、各政府機関がGithubリポジトリ(us.gov, ホワイトハウス)を持っている。GithubにはGitHub and Governmentというページがあるので、興味がある人は参照されたい。日本からは国土地理院、JAXA、和歌山県が現在登録されている。
ちなみに、オバマ前大統領のオバマ基金はWordPressだ。アメリカ政府のサイトやホワイトハウスはDrupalが採用されている。
閑話休題。こうした事例はなにもNacinだけなく、たとえばWordPress 4.4のリリース責任者であるScott TaylorはNew York Timesの開発者だ。これを日本に置き換えてみると、同様の事例はあまり思いつかない。
いや、実のところ、日本のWordPressコミュニティに大企業や政府機関の人はいるし、精力的に貢献を行なっている人も少なくないのだが、それはパブリックな活動ではなく、私的な領域として行われている。これはなにも彼・彼女がシャイだからというだけではなく、パブリックにしづらい状況が存在しているともいえるだろう。
こうした「状況」こそ、前大統領自らYoutubeにおいてコンピューターサイエンスを学ぶよう呼びかける国との差だと筆者は感じるのだが、読者の皆さんはいかがだろうか。
もちろん、日本でもクックパッドのようにRubyコミッターを積極的に採用する企業はあるのだが、パブリックな場でのオープンソース活用という点において、やはり日本はアメリカの後塵を拝しているといわざるを得ないだろう。
以上、WordPressの本家であるアメリカにおけるWordPressと政治の関わりについてお届けした。今後機会があれば、ヨーロッパなどの事例も紹介していきたい。みなさんのコメントをお待ちしている。