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有料テーマ販売を行う人が知っておくべきこと

筆者は高橋文樹.comというブログをやっており、そこではWordPressに関するディープな話題を時折書いているのだが、「テーマ・プラグインについて宣伝してくれないか」という営業の打診を受け取ることがある。

しかし、多くの場合、宣伝できない。「宣伝したくない」というより、「宣伝できない」のだ。この記事では、その背景について説明する。

前提:  WordPressコミュニティのライセンスに対する姿勢

WordPressはGPLライセンスのオープンソースソフトウェアであり、公式リポジトリでは4,000を超えるテーマともうすぐ50,000を越えようとしているプラグインが無料でダウンロードできる。

公式リポジトリに登録されるテーマ・プラグインは100%GPLであることを求められる

100%GPLについても簡単に説明しておこう。テーマ、プラグインは法的には「WordPressの派生物」と考えらるので、WordPressのライセンスと同様、GPLでなければならない。だが、それはあくまで「WordPressなしでは動かないPHPファイル」にのみ適用されるため、CSSやJSなどがGPLでなければならない法的根拠はない。

が、そもそもCSSやJSなしで動作するテーマやプラグインというのは考えづらいので、WordPressコミュニティとしては100%GPLを推進しているというわけだ。CSSやJSのライセンスをGPL非準拠のものにすることを「スプリットライセンス」と呼ぶ。

GPLを尊重するのは公式リポジトリでのホスティングだけに限らず、コミュニティのイベント(WordCampなど)に登壇者・スポンサーとして参加するためには、100%GPLを推奨していなければならない。まずこれが前提である。

プラグイン・テーマを宣伝できない理由

さて、本題に入ろう。筆者の元に寄せられたプラグイン・テーマを宣伝できない理由の大半は、「そのテーマ・プラグインが気に入らないから」という以前に、この100% GPLに抵触しているためだ。よくあるパターンを挙げよう。

とにかく、「このテーマ・プラグインは100%GPLではないので、宣伝できない」というケースが非常に多いのだ。筆者がもしこれらを宣伝してしまったら、WordCampのスタッフとして参加できなくなってしまう。

また、はじめの2例に関しては、プラグインやテーマがGPLでないこと自体がそもそもライセンス違反なので、そのことは事業者として良心に照らし合わせて、本当に正しいのかを考えてみてほしい。

有料販売を行いながらWordPressコミュニティと良好な関係を築く

さて、上記を踏まえると「100%GPLで有料販売を行えばよい」というのが本記事の結論になる。先行事例をいくつか紹介するので、参考にしてもらいたい。

Pippin’s Plugin

Pippin Williamsonが提供する3つの有料プラグイン販売サイトだ。 AllifiliateWP, Easy Digital Download, Restrict Content Proはそれぞれ公式リポジトリにもライト版が存在する。Pippinはコアにもコントリビューションを行い、筆者も参考にすべきビジネスモデルとして注目している。ちなみに、年間の売り上げが億単位(!)であるそうだ。

Pippinの有料プラグインは100%GPLだが、ダウンロードするためにはお金を払って有料クーポンを購入する必要がある。実はGPLは配布方法を限定していないので、有料で配布しようが、無料で配布しようが構わないわけだ。その他、サポートサイトやアドオンが存在するが、これは有料クーポンの保持者でなければ利用できない。

WooCommerce

WooCommerceは有料のエクステンション(要するにプラグイン)を販売するサイトを持っており、いくつかは無料だが、WooCommeceを本格的に使い始めると有料のプラグインを何個も買う羽目になる。WooCommerceのエクステンションはPippinと同じく、クーポンを購入することでダウンロード可能になる。そのエクステンション自体はずっと使い続けることができるのだが、アップデートを受け取ることができない。

他にもいくつかあるのだが、とりあえず代表的な2つの例を挙げた。

Conclusion

さて、上記の理由から、WordPressコミュニティの持つ文脈において、もっとも理想的なテーマ・プラグイン販売の方法を紹介しよう。

  1. テーマ・プラグインを100%GPLにし、利用方法に制限を求めない。
  2. そのテーマをダウンロードする際には何からの方法でお金を支払うようにする。Gumroadなどが簡単だし、英語でよければFreemiusというサービスも登場している。
  3. 1つのサイトで1つしか使って欲しくない場合は、アクティベーション機能をつける。これは公式リポジトリでは禁止されている手法だが、GPLに抵触するわけではなく、有料配布されているプラグインの多くはこの手法を使っている。
  4. できればプラグイン・テーマの「ライト版」を作成し、公式リポジトリに配置する。ただし、制限の仕方がユーザーにとって「ムカつくやり方」だとリポジトリから排斥される可能性があるので、注意。

上記のような販売方法にしてもらえると、筆者としても紹介しやすいし、WordPressコミュニティももっと盛り上がるだろう。

と、ここまで書いて思ったのだが……筆者の元に営業メールが来るのは、「高名な高橋先生にぜひご紹介を!」とお願いしているのではなく、ただたんに筆者を見込み顧客としてお金をむしりとろうとしているのかもしれない。

思い返してみると、メールにプラグインやテーマが添付されていた試しがないのだ。

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