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カスタムフィールド製造業ならびにWebアセンブラーという職業について

このCapital Pではポッドキャストを公開しているが、その収録の中で何度か出てきた言葉にカスタムフィールド製造業界というものがある。

この秀逸な言葉は西川伸一が半ば自嘲気味にWordPressコンサルタントとしての自分の仕事振りを説明するために使っている言葉なのだが、Capital Pファンからも受けが良かった。

さて、この記事では、「カスタムフィールド製造業界とは何か」という観点と、そのさらに先にあり欧米で一般的な職業となっている Web Asssembler という職業について説明したい。

なぜこんな記事を書くかというと、WordPressで商売をしている人間にとっておそらく重要であろう事柄を一般的な名詞に落とし込もう、共通言語を持とうという試みのためである。

カスタムフィールド製造業とは?

さて、この言葉は前述の通り、西川によってCapital Pに広まった言葉なのだが、この言葉が意味するのは額面通り「カスタムフィールドを駆使してWordPressサイトを作る仕事」である。

ただし、この言葉のニュアンスには自嘲的な側面が含まれており、それはカスタムフィールド自体の性質に由来する。

カスタムフィールドが持つ利便性とそこはかとないイケてなさ

カスタムフィールドは非常に汎用的であり、なんでも突っ込むことができる。文字列や数値どころか、配列さえそのまま入れることができる。

ある程度プログラミングに親しんだ者は「ええっ……」と苦々しいリアクションを返すかもしれないが、そもそも「データには型が必要である」という理念がすでに異常なのだ。そう、いま「異常」と書いたが、これは別に冗談ではない。

筆者はスタッドラーの鉛筆で耳かきに溜まった耳垢をほじるし、子供のおしりふきで床の食べこぼしを拭く。それどころか、小さな書斎に缶ビールを3本持って行くためにMacbookをお盆にする。そうそう、WordCamp Tokyoで登壇したNoel TockはiPhoneの指紋認証を「鼻」で登録していた。両手が使えない時に便利なんだそうだ。

想像してみてほしい。Macbookの上に缶ビールを3本(いや、6本?)載せて階段を駆け上がっているときに「ちょっと待った、それは本来の使い方じゃない、やりなおし」と言ってくる家族がいる情景を。そんなのは異常だ。

もちろん、あなたがFacebookやMicrosoftに勤めていて、2億行あるコードになんらかのコンポーネントを追加しないといけないのならば、厳密な型定義とコンパイルエラーが嬉しいのはわかる。だが、99%の人にとって、コンパイルエラーは嬉しくもなんともないのだ。何も動かない画面を見つめて途方に暮れてしまう。

そうした世界において、柔軟なカスタムフィールドは歓迎された。カスタムフィールドを使うことができれば、自分はWebサイトをどのようにもカスタマイズできるという自信を与えたのである。

カスタムフィールド製造業を支えるツール

さて、そうして自信を得た人々はそれを生業とするようになった。彼らがよく使うプラグインはAdvanced Custom Fieldである。ACFという略称で知っている読者も多いだろう。

大人気プラグインであるACF

ACFはUIでカスタムフィールドを設定し、投稿画面に「メタボックス」を表示することができる。こうしたプラグインが登場するまで、カスタムフィールドをユーザー(クライアント)に入力させるためのメタボックスを生成するのは難しかったのだ。

ACF|Creating a Field Group より

こうしたプラグインの登場により、それほどプログラミングに詳しくなくても、CMSを自由にカスタマイズすることができるようになった。ちょうど、WordPress 3.0から「WordPressはブログツールではなくCMSになった」ということが言われるようになったが、ACFのようなカスタムフィールドプラグインが果たした役割は大きい。

ちなみにであるが、ACF PRO GPLライセンスに違反しており、これを宣伝するとWordCampなどのセッションに登壇できなくなるルールになっているはずなのだが、洋の東西を問わずACFに関しては黙認されており、なんというか、「数は力なり」と思わざるを得ない。筆者はというと、車輪の再発明が好きなので、ACFをまったく使わず、自分で作ったTSCFというのを使っている。

結論:カスタムフィールド製造業とは?

いったんまとめよう。カスタムフィールド製造業とは……

といった概念である。

Web Assemblerとは?

ここ半年ぐらいで日本でも言及されるようになったが、欧米のWeb業界で通用する言葉として “Web Assembler” がある。端的にいうと、カスタムフィールド製造業界をヤフオク!とするなら、Web Assembler はmerucariである。つまり、似たようなモノではあるけれど、もっと新しくて、なにか違ったモノだ。

Web Assemblerの仕事内容

Assembleとは英語で「集める」を意味する動詞だ。SMAPのAである——Sport, Music, Assemble, People……まあ、集まったところで結局は解散するのだが。

Web Assemblerという言葉には「いろいろかき集めてWebサイトを作る人たち」という言葉通りの意味の他に、アセンブラ、つまり「機械語とプログラミング言語の橋渡し」という意味があるのかもしれない。そう、Webサイトを作るという作業は、ほんとうに意味のわからないことなのだ。

では、彼ら・彼女らが具体的に何をするかというと、プレミアムテーマとページビルダーを使ってWebサイトを制作することである。

メジャーなものとしては、次のようなものがある。

Divi

https://www.youtube.com/watch?v=q9XI0Lo-SWE

時間がある方はデモがあるので、見て欲しい。サインアップすれば無料で試すことができる。これがWordPressプラグイン&テーマでできているということは、にわかに信じがたいだろう。

beaverbuilder

https://vimeo.com/122546221

beaverbuilderもdiviに負けず劣らずハイクオリティなページビルダーだ。

Visual Composer

https://www.youtube.com/watch?v=mMBaQiG9Er4

Visual Composer はプラグインで、それ自体ではテーマがないのだが、ThemeForestなどに対応しているテーマが掃いて捨てるほど売っている。ライセンス的には微妙だったはず。

Unyson

https://vimeo.com/105104261

こちらもThemeForestなどで対応テーマが多く売られているページビルダープラグイン。公式リポジトリにおいてあるが、「外部からプラグインをインストールしてはいけない」というルールを思いっきり破っている。

Web Assemblerとは、こうしたツールを駆使して顧客に対してWordPressサイトを提供する職業である。

多目的テーマ

さて、Web Assemblerの特徴の一つに、「テーマを選ばない」という点があげられる。カスタムフィールド製造業者の特徴として、「テーマは自分で作る」という点がある。もしくは、なんらかのテーマを目的別に選び、それを子テーマとしてカスタマイズする。

しかし、Web Assemblerはそんなめんどくさいことはしない。なぜなら、たとえばdiviがそうであるように、テーマ自体が色々なカスタマイズをできる仕組みになっているからだ。

Diviのデモ。全部同じテーマ。

Web Assemblerは get_field() 関数など書かない。ときにはCSSさえ書かない。顧客の要望に耳を傾け、設定を終えたら完了だ。

こうしたワークフローを実現するためにはテーマ自体が多様な目的に合致したマルチパーパスなつくりになっている必要がある。そう、結婚式用テーマとか、カフェ用テーマとか、そんな世界ではないのだ。

Web Assemblerの市場

さて、こうした「ソフトウェアの設定」といった趣のある仕事が職業として成り立つのかというと、普通に成り立っている。どれぐらいの市場規模かは知らないが、少なくともdiviだけで437,821人の顧客がいるそうなので、それなりに大きいのだろう。

もちろん、この「顧客」には、自分のサイトを自分で作る人だけではなく、デザインエージェンシー、日本でいうところのWeb制作会社の人も含まれている。

diviのサイトより。$89*437,821人って、日本円で46億円? 盛りすぎじゃね?

Theme Forestで1万におよぶ販売数を稼ぐのもこうしたマルチパーパステーマ+ページビルダーの組み合わせだ。

結論:Web Assemblerとは

上記を踏まえると……

という職業である。

さて、以上でCapital PにおいてWordPress業界人の心にさざ波を立てていた単語カスタムフィールド製造業界と、最近個人的に注目している “Web Assembler” という2つの単語について説明を終える。

今後、Capital Pでもこうした業界の未来についての話題を提供していきたいと思っているので、該当する方はぜひアンケートにお答えいただきたい。

Web制作を仕事としているあなたに該当するのは?

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