現在のWordPressは推奨動作環境をPHP7.2以上としていますが、動作保証をしているバージョンはPHP5.2.4以上となっています。
このことによっていろいろと批判もあるわけですが、すでにセキュリティパッチが提供されていない PHP バージョンを使用しているサイトがWordPressサイト全体の 40% 近くもあり、PHP 5.2を使用しているサイトでさえ 4% 近くあります。
日本語のサイトがWordPressサイト全体の 6% であることからも分かる通り、これは決して小さな数字ではありません。
さらに内情を言いますと、これは世界中のホスティング会社様各社からの要望であり、彼らがなぜ古いバージョンのPHPを捨てられないかというと、そこではWordPress以外にも様々なCMSや独自なシステムが現在でも稼働しているからです。
Servehappyプロジェクト
とはいえ、WordPressというオープンソースプロジェクトを取り巻くエコシステムの変化により、いつまでも古いバージョンのPHPをサポートし続けることが非常に困難になってきました。
たとえば、ユニットテストを行うためのフレームワーク PHPUnit を PHP5.2 で動作させるのはとてもめんどうで(なんてったってPHP5.2はComposerが使えない!)、ましてや PHP5.2 から PHP7.2 まで全部で動作するテストを書くのはもはや職人芸の領域になりつつあります。
そんな中で WP-CLIチームのコミッターの一人である Alain Schlesser さんが陣頭指揮をとって Servehappy というプロジェクトが始動しました。
WordPressには古いバージョンのブラウザで管理画面にアクセスすると以下のように警告が表示される機能があります。
https://browsehappy.com/?locale=ja
これはBrowsehappyというプロジェクトとして現在もメンテナンスされているのですが、Servehappyはそのサーバー版と言えます。
まだ最終的なゴールは未定ですが、Servehappyプロジェクトでは、この Browsehappy のように古いバージョンの PHP を使用している場合に、ダッシュボードに警告等が表示する等、何らかの形で PHP のバージョンアップを促すことを目的としています。
Servehappy プロジェクトのロードマップについて
現時点ではまだ提案段階のプロジェクトではありますが、コアチームのブログにおいて、Alain さんによる以下の記事が公開されました。
この記事では今後ディスカッションするべき事項として、以下のようなことが述べられています。
- ホスティング各社のサポートコストを急増させないために、段階的にPHPのバージョンをあげていく。とりあえず PHP5.2 のサポートを打ち切り PHP5.3 は引き続きサポートしていく。その後ゆっくりとPHPがメンテナンスを提供しているバージョンと、WordPressが実際に動作保証を行う PHP のバージョンとのギャップを埋めていく。
- 2018年の第1四半期に公式サイトを公開。
- 同第二四半期に、管理画面になんらかの通知を表示する。
- 第三四半期にWordPressがサポートするPHPの動作保証バージョンを変更。
ここで書かれていることは今後検討すべき案として書かれていることで決定ではありませんが、もし古いバージョンの PHP を使っているならば早急にアップデートしましょう。
まだドラフトの段階ですが、いくつかのスクリーンショットも公開されています。
日本での対応について
まず、このプロジェクトの国際化についてですが、最終的な形が確定していないため具体的な方法はまだ検討されていませんが、かならず日本語でも利用できるようになります。
(追記: 検討していないというより、もうすこしたってから検討しましょうということになっています。)
また、Servehappyプロジェクトでは、単に警告を表示するだけでなく、世界中のホスティング会社各社の PHP のバージョンアップを行うためのヘルプページへの導線を何らかの形で提供することも検討しており、すでに日本のホスティング会社の情報も 30 社ほど集められています。
以下はそのリストです。このプロジェクトには、筆者もコミッターの一人として参加していますので、みなさんが利用中のホスティングサービスのページがもしこのリストになければ、ぜひプルリクエストをお待ちしています。
https://github.com/WordPress/servehappy-resources/blob/master/tutorials/hosting-specific/tutorials-ja.md