ChatGPTをはじめとして様々なAIツールが発表されまくっている2023年だが、WordPressコミュニティから「WordPress.orgでホストされるコードがGPLと互換性があることを保証するのは作者」という声明が発表された。ChatGPTにお願いすればWordPressプラグインもできてしまうことがわかりつつある今、ライセンスについて早めに線引きをしておこうと判断されたのだろう。
この声明では、なにが「コードジェネレーターか」という定義はされていないため、コメントでは「GitHub Copilotは?」「IDEのインテリセンス(コード補完)は?」といった質問も出ているのだが、コミュニティとして明確に出せる表現は「コードのライセンスを保証するのは作者」ということのようだ。もはやChatGPTのようなAIを見破ることは難しいことがわかってきているので、致し方なしだろう。
なお、似たような事例ですでに報道されている例として、米国のSFマガジンClarkes WorldがAIの生成した作品投稿の急増によって一時受付停止になった(gigazineの報道)ケース。筆者は2019年のWorldCon(SFのWordCampみたいなもの)で主催のClarkes氏に会ったことがあるのだが、以下のような条件のSFマガジンだった。
- 公募を受け付けており、誰でもSFの短編(英語)を応募することができる。
- 掲載作はヒューゴー賞などの著名な賞の候補になる可能性がある。
- 掲載すると原稿料がもらえる。
- 掲載には査読があり、一定の評価を得た作品だけが掲載される。日本の小説投稿サイトのように誰でも掲載されるわけではない。
Clarkes氏は明言を避けていたが、AIで生成したと思われる作品にはある傾向があり、特定の地域に多いということだった。筆者が邪推するに、たとえば米国と賃金格差があり、英語を母語としない地域の人の中には、AIで100個の小説を送りつけて1件でも採用されれば大儲けと考える人もいるだろう。少数の人数で査読を行なっているClarkes Worldのような媒体にとっては迷惑な話だ。
WordPressの公式ディレクトリの場合、登録されたからといってお金がもらえるわけではないので深刻な事態にはなっていないのかもしれないが、すでに5件の「トップに戻るボタン」プラグインが「あきらかなコピペ」を理由にリジェクトされたそうだ。これはレビューする側にとってはかなりガックリくる投稿だろう。
Sadly this has already become a small issue, as people asked an AI to build a ‘scroll to top’ plugin and it literally copied code from another, existing, plugin hosted on WordPress.org. Actually five times. And they were all rejected since it was pretty obvious.
なお、この件とは関係ないと断っているが、プラグイン・レビュー・チームの代表を長く務めたMika Epsteinが引退することが公表されている。ほとんどのプラグインをレビューしたのがEpstein氏なので、まずは感謝を表明したい。
後任は決まっていないとのことなので、もしかしたらしばらくのあいだプラグインの公式ディレクトリ登録申請が滞るかもしれないことは意識しておいた方が良いだろう。