WordPress 5.5がリリースされ、5.6のマイルストーンが発表されたのだが、リリースチーム(Release Squad)は全員女性になることが決まった。5.6のリリースは12月8日を予定している。目玉機能としてはメニューのブロック化、コアの自動目メジャーアップデート、新デフォルトテーマ、フルサイトエディッティングのベータ導入、PHP8のサポートなど。
なぜ全員女性なのか
これは2020年3月にプロポーザルがあった通りのことであるが、昨今のフェミニズム機運の高まりと無縁ではないだろう。
テック業界のロックスターは多くが男性であり、リリースチームもほとんど男性だった。能力的に優れた女性が多くいるにもかかわらず女性の技術者としての地位が不当に貶められてきたというのは歴史の語るところである。NASAの黒人女性数学者キャサリン・ジョンソンの例などがわかりやすいだろう。
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こうした状況を是正する意味でも、WordPressがリリースチームを全員女性にするというのは、先進的な取組として評価できる。オープンソースソフトウェアにおいてもリリースチームが全員女性というのは筆者の知る限り前例のないことだ。
5.6リリースチームの紹介
リリースリードはAutomatticのJosephaら3名で行う。Josephaは各チームのやりとりを促進する役割を行っているので、makeブログを読んでいる人は”X-Post”という題名の記事を読んだこともあるだろう。Capital Pでも紹介したことがある。
他にも10upのHelen 候 SandiやWordCamp男木島にも来ていたEllen Bauer、WordCamp Tokyoでデザインのトリアージ を指導してくれたTammie、デフォルトテーマのデザインを手がけてきたMel Choyceなどなど、WordPressコントリビューター界で見知った顔が並んでいる。
コメントの紹介
さて、WordPressコミュニティのメインストリームはオープンマインドなのでこうした取り組みに対して応援する雰囲気なのだが、「全員女性なんだ、応援するよ! チャンチャン」とはならないのが人間社会の難しいところである。
たとえば、このニュースを報じるWP TAVERNの記事には早速次のようなコメントがついている。
It is concerning that woke tokenism is now lauded as a good thing.
The only criteria should be who is best for the role.
〔引用者訳〕建前主義がさもいいことであるかのように主張されているのが心配だ。
必要条件は「その役割にとってベストなのは誰か」のはずだ。
Peter Shaw
要するに、「実力があるのかどうかわからないのに女性ばかりを選ぶのは建前主義ではないか」ということであり、裏を返せば「女は男より劣っている」という偏見が垣間見えているのだが、こうした偏見はけしてマイナーなものではないだろう。
他にも「性別でチームを判断すること自体がそもそも差別的だ」というコメントが女性から出ていたり、「能力について疑問を呈する人たちはこれまでの男性リリースチームの能力に疑問を呈してきたのか?」というカウンターが飛び出すなど、議論が紛糾している。また、こうした議論が巻き起こると必ず「それなら人種的な差別は是正しないのか」「学歴はどうだ」というAllLivesMatter式の反論が起きるのも常である。
宇崎ちゃん論争 などのより低次元なバトルを常日頃twitterでウォッチしている筆者などからすると、リリースチームを全員女性にするということ自体は社会的にまっとうな試みに見えるし、そもそもこれまで多くの人はリリースチームが誰かなどあまり気にしていなかったのではないかとも思うのだが、いざ決まってみると反対意見が出るものだ。
リリースチームを確認したところ、 日本人っぽい名前は確認できなかったのだが、もし興味があればぜひ女性もコントリビュートしてみて欲しい。幸い、日本語コミュニティは日本語チームを中心に女性が活躍しているので、WordSlackなどで助言を求めれば助けを得られるだろう。