WordPressコミュニティに新人事発表、新たなリードが2人追加

本日、WordPressの共同創業者であるMatt Mullenwegが発表した内容によると、WordPressプロジェクトに新たに2人のリードが誕生した。これは以前から存在していた職種——という表現が適切かはわからないが——ではなく、新設のものである。

1人はJosepha Hadenで、エグゼクティブ・ディレクターを務める。これはすべてのコントリビューターチーム(コア、メタ、ポリグロッツなど)のメンターのような立場になるらしい。1つ1つのチームがコンビニの店舗だとすると、エリアマネージャーのような存在だろうか。筆者はWordCamp Europeでこの人に会ったことがあるような気がするのだが、もしその記憶が確かなら、アジア地域の事情に詳しかった気がする。ちなみにa8n(Automattician = Automatticの社員)である。

もう1人、Joost de Valkはマーケティング&コミュニケーション・リードに任命された。これはWordPress.orgのマーケティングを担当するポジションらしい。広報担当といったところだろうか。Joost(オランダ語名なので「ヨースト」と読む)は言わずと知れたSEOプラグインYoast SEOの開発者なので、適任だろう。

WordPressコミュニティも成熟し、なんとなく大企業感が出てきた感じがする。

新人事はコミュニティに歩み寄ったか?

さて、以前もMattさんによる唐突なリードの発表はあったが、そのときはGutenberg開発の渦中でもあり、「すごい人なんだろうけど、誰?」というのがコミュニティの率直な感想だったのではないだろうか。今回もAutomatticの社員が入っているのだが、Joostもいることだし、それほどコミュニティから乖離した人事ではない。もっとも、この人事がどのようにして決まったのか、筆者は全然しらないのだが。

オープンソースの発展と企業の参画は両立するか?

さて、ここ最近のWordPressコミュニティでは、Matt率いるAutomatticのメンバーが要職に就く展開が続いている。有り体にいえば、Mattの強引な人事によってAutomatticの影響力が増しているように筆者からは見える。もちろん、Mattはプロジェクト・リードであり、いうなれば人事権を持っているので、普通の企業がそうするようにMattが決めること自体に筆者は異論はない。

これは筆者の受ける印象でしかないが、最近のWordPressコミュニティでは、ボランタリーな趣味のコントリビューションというより、特定の企業がOSSのプラットフォーム上での影響力をますために、いわば投資として自社の社員にコントリビュートさせる例が増えてきているように思う。昨今のWeb開発の複雑さを考えると、確かに趣味でパパッとやるというより、しっかりとしたコミットメントを持った人の方が成果を出しやすいのかもしれない。この傾向が果たしてどのような結果をもたらすのか、筆者は非常に興味を持ってみている。

Publickeyの記事Redis、MongoDB、Kafkaらが相次いで商用サービスを制限するライセンス変更。AWSなどクラウドベンダによる「オープンソースのいいとこ取り」に反発によると、各種OSSの開発元が、クラウドベンダーがほとんどソフトウェアに貢献することなく巨万の富を得ていることに反発し、ライセンスを変更したとのことだ。「無償でOSSを提供してサポートなどで儲ける」というRedhatから続くビジネスモデルは、クラウドベンダーのSaasモデルによって崩壊しつつあるともいえよう。

上記の事例に比較すると、WordPressに対して様々な企業が投資をすることはかなりよい関係に思える。

しかしながら、WordPressに投資としてのコントリビューションを行うことのできる企業の多くがSaas(Software As A Service)企業であることを忘れてはならない。Human Madeのようなエージェンシー業で多くのコントリビューターを抱えているところもあるにはあるが、筆者の予測では非Sass企業によるコントリビューションは減少トレンドにあるように思う。これは個々の企業の能力の違いというより、単純にスケールメリットの違い、つまりビジネスモデルの違いが原因ではないだろうか。

くしくも、先日のNewspack(これもSaasである)はWordPress業界で大きなニュースとして受け止められた。興味深い記事としては“Newspack: Automattic, Google, and the SaaSification of WordPress”などがあった。

この記事で取り上げられている“Sassification of WordPress”というトレンドは抑えておいて損はないだろう。Automatticの提供するWordPress.comはまさにSaasであり、レンタルサーバーを借りて自分でWordPressをインストールするなどという面倒をかけたくないユーザーをターゲットとしていた。それがNewspackによってそれよりも上位のレイヤーに対してアプローチを行なっている。

また、WP EngineKinstaのようなWordPress専用ホスティングを提供する会社は自らをデジタル・エクスペリエンス・プラットフォームとして——ホスティングではなく顧客とのオンラインコミュニケーションを提供するプラットフォームとして——戦略的に位置付けている。ページビルダーやテーマの買収は、自社のプラットフォームをより「サービス」に近づけるためのものだ。

そういえば、日本で長らくトップレベルのWordPressエージェンシーであったDigital Cubeも最近はShifterというスタティックサイトジェネレーターに注力している。

こうした事例を鑑みるに、WordPressを取り巻くビジネスでは、どのようにしてWordPressをSaasとして提供するかがトレンドになっているわけだ。果たしてこのトレンドがどのような帰結を迎えるのか、じっくり見守りたい。

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ちなみに筆者はKafkaというソフトウェアが存在することを初めて知った。

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