WordPress.comがオンラインクラスのドキュメントを公開

Automatticが運営するWordPressのマネージドサービスWordPress.comは昨年有料プランで利用できる定期支払い機能をリリースした。それに関連し、定期支払いのためのドキュメントも存在したのだが、日本語に翻訳されたようだ。

https://wordpress.com/ja/blog/2020/03/30/move-your-classes-online/

このドキュメントではオンラインスクール運営者の具体的なマネタイズ手法について説明している。

WordPress.com では、世界中で語学講師、ヨガスクール、パーソナルフィットネスコーチなどがサイト運営しています。

具体的にやること(e.g. Stripeとの接続、定期支払いプランの作成、ボタンの埋め込み)もさることながら、オンラインクラスを運営する秘訣なども関連文書に書かれているので参考になるだろう。

そこに「らしさ」は存在するか?

さて、WordPress.comというマネージドサービスでも定期購入による収益化が可能になったわけだが、日本でも同様の収益化できるブログサービスとしてはnoteが挙げられる。WordPress.comが日本のマーケットで伸長できるかどうかは現時点では不明だ。オンラインクラスのための機能(e.g. Zoom連携、予約カレンダー)は外部サービス頼りなので、その部分の連携がシームレスにできるようになると差別化要因にはなるだろう。

ただし、noteの強みはそのネットワークである。noteには明らかに「noteらしさ」が存在する。この「らしさ」はいくつかのクラスターからなっており、一つはイケダハヤトやはあちゅうといったプレイヤーに代表されるサロン勢が挙げられる。よく言えば「儲かりそう」な雰囲気だ。「ブログで稼ぎたい」と考えている人のうち何人かはnoteをその選択肢として思い浮かべることだろう。もう一つは作家・ライターなどの出版クラスタだ。早川書房はnoteに公式ページを持ってSF関連のバズ(e.g. 百合が俺を人間にしてくれた)を生んでいるし、つけびの村のようなノンフィクションもnote初出として話題をさらった。最近、CTOのfladdict自ら「金儲けを煽るな」という利用規約について雑感を書いていたが、noteとしては前者の金儲け勢に頼らないコミュニティを形成していきたいと思っているのだろう。CEOが「もしドラ」の担当編集だったことも強く関係しているはずだ。

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山口連続放課事件を扱ったノンフィクション。

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とにかく、noteには「〇〇を書いて収益化するならnoteかな」と思わせる「らしさ」が存在する一方、WordPress.comにはまだない。「オンラインクラスをするならWordPress.comかな」と人々の選択肢に登るようになればマーケットシェアはかなり取れるだろう。ただ、そのためにはオンラインクラスをする人々のコミュニティを形成することが先決で、それはけして簡単なことではない。

セルフホスト型はどうする?

以前Capital Pでも会員制サイトによる定期購読ビジネスについての記事を書き、その記事は長いあいだ定期的にアクセスを稼いでいる。

しかしながら、コミュニティを備えたプラットフォームが強くなるにつれ、個別のWordPressサイトを持つ必然性は薄れてくるだろう。どうしても個別にWordPressを設置しなければならないとしたら、以下の理由が必要だ。

  • プラットフォーム(note, WordPress.com)にはない特殊要件が存在する(つまり激しくカスタマイズすることになる)
  • プラットフォームで取り扱えない商材(筆者は合法なものとしてアダルトコンテンツぐらいしか思いつかない)

筆者のようなWordPressで受託販売をする者としては念頭に置いておかなければならない。単に「定期購読機能が作れますよ」だと訴求が弱くなってしまう。

また、WordPressの開発能力に自信がある企業はプラットフォーム側に移行していくことも現実的な選択だ。実際に、筆者が相談を受けた案件では、マルチサイト で月額有料制(ユーザーの売り上げに応じて従量課金されるのが望ましい)にし、業種特化型でサービス展開しているところがいくつもあった。noteの強みとしてのコミュニティに言及した通り、一定のクラスタに向けて魅力的なサービスを展開できるならビジネスの投資先として悪くないはずだ。

たとえばpixivFanBoxは漫画家・イラストレーターのための収益化プラットフォームであり、利用している人は多い。こうした特化型のサービスを作れれば、まだまだWordPressの出番は多いだろう。

なお、WordPress.comを見ているとわかるのだが、オリジナルのブロックをかなり多く用意している。もしプラットフォームとしてWordPressを提供するならどのようなブロックを提供しているのか、見てみるとよいだろう。

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