去る2025年2月20日〜22日にかけてWordCamp Asia 2025が開催された。今回はそのリポートをお送りする。
マニラの街並み紹介
さて、筆者は30年ぐらい前に親に連れられてマニラに行ったことがあるのだが、そのころと比べると発展度合いには隔世の感がある。成田からLCCで直行便5時間、昨年開催された台湾のちょっと先だ。交通の利便性は悪くない。
が、これまで開催されたタイ、台湾と比べると発展段階は少し劣る印象だ。筆者はマニラ訪問に先駆けて岩波新書『ルポ フィリピンの民主主義 ピープルパワー革命からの40年』を読んだのだが、周囲の東南アジア諸国と比べて経済発展に遅れをとったとのこと。たしかに、街並みを見ている限り同書の指摘はそれほど間違っていないように思う。マルコス独裁政権やペニグノ・アキノ暗殺事件・ピープルパワー革命などが幼い頃の記憶として残っているが、麻薬撲滅を掲げたドゥテルテが人気を博し、その後にマルコスの息子であるボンボン(愛称)が国家元首となっていることを考えると、いたしかたなし、という気もする。

物価は非常に安く、日本の1/3程度。移動はおもにGrabを使用した。筆者は中年男性なので治安がそれほど悪い印象を受けなかった(2016年のフィラデルフィア郊外の方が10倍ぐらいヤバかった)が、歩道があまり整備されていないこと、野良犬がそこらじゅうにいたことを鑑みると徒歩移動はあまりおすすめできない。
ホテルは会場すぐそばで一泊6,000円程度。東京でいうならお台場あたりに泊まった感じなので、やはり物価は安かった。飲食代もかなり安い。会場はフィリピン・インターナショナル・コンベンションセンター(PICC)で、フィリピンでは大型のコンベンションセンターだと思われる。

コントリビューターデイ
さて、まずは1日目、2月20日のコントリビューターデイである。西欧圏のコントリビューターも多く参加していたが、オーストラリアやリモートワークでアジア在住の人も多かった。筆者はメタチームに参加、WordCampのチェックインシステムを導入するべく導入した。会場のネットワークがDocker Hubへの接続を禁じていたらしく、効きすぎたエアコンに震えながらの一日であった。
コントリビューターデイには700名程度が参加、これはアジアのWordCampで史上最多である。コントリビューターチームのリードを務めたのはタロスカイの三木徹。最後の挨拶でウルっときていたので「引退するのか?」と思ったが、そういうわけではなかったらしい。

セッションデイ
セッションデイは2月21日と22日の2日間に渡って行われた。通訳は特になく、英語のトラックのみ。フィリピンはアメリカの植民地だったということもあってかなり英語が通じるから特に問題はないのだろう。
日本からは2名が登壇。
河野千秋氏は“Beyond Borders: Essential Steps for WordPress Multilingual Success”で多言語化を紹介。武藤桂子氏は“Small Steps to an Accessible Website”でアクセシビリティを紹介した。両名とも英語で堂々たるセッションを行なっていた。


他に気になったセッションは、Rashmi Nagpalによる“Decoding Vulnerabilities: Elevating WordPress Security with LLMs”とYoastのAlain Schlesserによる“After the Browser: AI Assistants as the New Gateway to Digital Services”で、いずれもLLM・生成AI関連である。前者はセッションを聞いている最中に「なんか頭良さそうだな」と思ったらほんとによかったことが印象に残っている。後者は「ブラウザの終焉」についての刺激的なセッションだったので、別記事を書いて紹介したい。
これは昨年のAWSサミットに参加したときも感じたのだが、こうしたセッションで紹介される話題が徐々に「専門性は増しているが新奇性がない」ように思えてしまう。生成AIなどのWebよりも大きな枠組みでインパクトを与えそうな話題に興味が移ってしまうのは人の性か。
さて、セッションデイの締めはマットによるQ&Aコーナー。とりたてて印象に残った質問はなかったが、wpdramaにで提唱された透明性についての質問には「裁判が終わったらね」とかわしていた。

スポンサーブース・アコモデーション
スポンサーブースはセッション会場から離れた場所にあり、大変盛り上がっていた。日本からはLightningのVektorが出展、ブースにはひっきりなしに人が訪れていた。

大きなWordCampではiPad・iPhoneなどの高額商品があたるクジ引きが大盛り上がりするものだが、ノベルティとして目立っていたのはWooCommerce。なにやらシルクプリント的なストールを配っており、長蛇の列が形成されていた。筆者も家族のお土産にもらおうとおもったが、列が長すぎて諦めた。

もちろん、垢BANされたWP Engineは不参加。AutomatticやBlueHost、Yoast、Elementorなどが大型のブースを出して盛り上がっていた。

YoastとBluehostはなんとマグカップをスポンサー。おなじみのコーヒーブースには耐熱マグカップが置かれており、自由にもらうことができた。紙コップよりはエコだしよい取り組みだと思ったが、2日目に持ってくるのがめんどくさすぎたのでユーザー体験としては一長一短か。
アフターパーティー・サイドイベント
最近のWordCampでは「サイドイベント」として、招待制のパーティーが1日目・2日目に開催される。登録制だったり、ブースで声をかけると参加できる仕組みだ。
筆者はthe Code Company、AutomatticとElementorのパーティーに参加した。
アフターパーティーはPICCのパーティーホールで行われた。念願のバロット(孵化しかけの雛が入ったゆで卵)も食べられたし、台湾で出会ったけん玉フレンドの哲也とも再会できたし、久しぶりに楽しめた。

アフターパーティーはともかく、サイドイベントは参加のハードルが高い。しかし、申し込んでおいて損はないだろう。筆者はElementorの創業者などとも話ができ、なかなかよい経験になった。
次回の開催地
さて、WordCamp次回の開催地だが、2026年はインドのムンバイに決まった。インドはWordPressユーザーもコントリビューターも非常に多く、順当とはいえる。一説では、WordCamp ムンバイ単体でも2,000人を超える人数が集まるとか。もっとも、これもアジア的な「盛ってる表現」なのかもしれないが。ただ、インドは旅行先としてはかなり難易度が高いので、タイ・台湾・フィリピンと比べると二の足を踏む人も多いかもしれない。
世界情勢の先行きが見えない昨今、インドに行く機会も人生で最後かもしれないので、WordCampをきっかけに訪問してみるのもよいだろう。今回のWordCamp Asiaも多くの日本人スタッフが参加していた。日本コミュニティは世界からも成熟したコミュニティとみなされているので、ためらわずにボランティアスタッフとして参加してみてはどうだろう。

それでは、最後にギャラリーを残してWordCamp Asia 2025参加リポートを終えたい。












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