WordPress共同創業者はJAMstackが好きではない?

WordPress共同創業者Matt Mullenwegはテック系メディアThe New Stackのメールインタビューに回答し、”WordPress Co-Founder Matt Mullenweg Is Not a Fan of JAMstack“でその返答が紹介されている。メールの全文が紹介されているわけではないのだが、返答のうち主な批判が2点紹介されている。ざっくり要約すると以下の通り。

  • JAMstackは大半のユーザーにとってMovable Type時代への後退である。ビルドが遅い。
  • JAMstackは様々なサービスをつなげたチェーンとなっているが、そのどれか一つに綻びがあると全体が壊れてしまう。

それに対してインタビュアーのRichard MacManusはいくつかの反論を行っている。

  • 2005年のMovableTypeといまのJAMstackはだいぶ違う。
  • JAMstackのCMSとしての体験はベストとは言い難いが、
  • たしかにJAMstackは様々なAPI・サービスを利用するが、WordPressのプラグインシステムにも同様の問題がある。
  • Mattは「JAMstackはSaasの組み合わせで月何百ドルもかかるがWordPressなら共有レンサバで月数ドルで実現できる」と主張しているが、私(MacManus)はHugo, Netlify, GitHub, Forestryで無料でJAMstackブログを運営できている。

MacManusはMattの指摘がまったく的外れだとは思っていないようで、実際に自身のブログをJAMstackに移行する予定はないようだ。

誰のためのJAMstack?

いったんJAMstackについておさらいしておくと、定義としては以下の通り。

Fast and secure sites and apps delivered by pre-rendering files and serving them directly from a CDN, removing the requirement to manage or run web servers.

JAMstack.org

Jekyl,Hugo,Nuxtなどで書き出したHTML・JSなどの静的ファイルアセットをNetlifyなどの配信サービスにデプロイするパターンがよく知られる。Movable Typeと似ているが、単一の一枚岩的モノリシックなサービスではなく、複数のSaasを組み合わせることが前提となっている。

記事中でも触れられていたように、JAMstackに興味を持っているのは開発者(とくにフロントエンド)であることは明らかであり、各サービス(e.g. Netlify)もいわゆる「カフェの店長」に使ってもらいたいとは思っていないだろう。「GitHubにMarkdownファイルをプッシュして記事を公開する」というフローが本気で全員にオススメできると思っている開発者も少ないはずだ。

However, where the benefits of JAMstack kick in is on the development side. Developers have reason to be excited about frontend development platforms like Vercel and innovations like Netlify Functions.

WordPress Co-Founder Matt Mullenweg Is Not a Fan of JAMstack

そういう観点からいうと、現在のJAMstackツールセットとWordPress(特にWordPress.com)の潜在的ユーザーはそもそも異なっており、新興テックメディア(JAMstack)の編集者にMattが批判的な意見を述べるのは致し方ないこととも言える。

WordPressはJAMstackと関係ないのか?

さて、紹介した記事ではあたかもWordPressがJAMstackに否定的かのようなまとめ “it should be noted that WordPress also has its critics in 2020” をされていたが、MattはWordPress の共同創業者かつ実質的なプロジェクトリーダーではあるが、WordPress.comのオーナーであるということを忘れてはならない。もちろん、”Learn JavaScript Deeply”といったのはMatt本人なので、その価値に気付いていないわけではない。

WordPressにはいろいろなプレイヤーがおり、たとえばCapital Pでも何度か取り上げたShifterのようにWordPressをヘッドレスCMSとして利用するサービスもある。

また、JAMstack vs WordPress という文脈でよく引き合いに出される「メンテナンス性」「パフォーマンス」「セキュリティ」などの点についても、WP EngineなどのWordPressマネージドホスティングを利用することでかなり改善される。

そういう意味でJAMstackおよびその提供するソリューションをWordPress業界がまったく無価値に感じているわけではなく、やる人はやっているというわけだ。

まとめ

というわけで、JAMstackという「新業界」のメディアと「Web界のWindows」WordPressとのプロレスといった感じの記事を紹介した。スポンサーを見ると、その勢力図がよくわかって面白い。

The New Stackのスポンサー。

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