公式ディレクトリからブロックされたWP Engine所有プラグインはアップデートを自前実装の方向へ

先日お伝えした通り、Advanced Custom FieldsがWordPress公式ディレクトリで「乗っ取られた」のだが、その後も状況は変わらず、WP Engineの関係者は公式ディレクトリにアップデートを提供できないままだ。その結果、結構なプラグインが影響を受けることになり、有名どころとしては次のものがある。

  • WP Offload Media Lite
  • WP Migrate Lite
  • Genesis Blocks
  • PHP Compatibility Checker(熱心にメンテナンスされている気配はないが)

WP Engineは買収したプラグインも多く、作者もバラバラなので、統一された作り方をされているわけではない。が、今回にあたってはこれらのプラグインに管理画面から更新可能になるアップデーターを自前実装したようだ。

Offload Mediaの開発元Delicious Brains

対応方法は下記の通り。

  1. WP Engineのページにいって、該当するプラグインのZipをダウンロード。
  2. SFTPなどでアップロードするか、プラグインのZipアップロード機能を使う。
  3. この後、プラグインの最新版はWP Engineの提供するサーバーからダウンロードされるようになる。

この作業は一度きりで、以降のアップデートは公式ディレクトリのプラグイン同様に管理画面から行われる。

結果的にWP Engineは「公式ディレクトリ離れ」を余儀なくされたわけだが、この動きに追従するプラグインも出始めており、たとえばPaid Memberships Proは公式ディレクトリを閉鎖し、自発的にプラグインを自前アップデートしていくことに決めたようだ。理由としてはブログ記事 “Leaving WordPress.org: Here’s Why and What It Means for Paid Memberships Pro Users” に詳しい。

  1. ACFのようにプラグインを「乗っ取り」されることは、20人程度の規模のプラグイン・カンパニーにとって致命的である。
  2. ユーザーをブロックするような方針には賛同できない。去るならいましかない。
  3. プラグインガイドラインが更新され、プラグイン自身やアドオンをダウンロードする機能が存在してはいけなくなっているが、ガイドライン更新以前に同様の機能を実装していたプラグインへの救済措置が明確ではない。そもそもWooCommerceはそれを行なっている。

とりわけ衝撃的なのは公式ディレクトリからプラグイン削除の要請を入れたところ、マットからDMで「公式ディレクトリで我々が引き続き配布する」という「脅し」を受け取ったことである。最近、マットはDMをよく晒されているが、これが事実なら、プラグイン開発者たちの忠誠心はますます低下していくことだろう。WP Engineのような大規模な企業とAutomatticがバトルするなら「勝手にやっとくれ」という開発者も多かっただろうが。

無料プラグインを公式ディレクトリで配布し、プレミアムプラグインを有償で配布するというフリーミアムモデルはWordPressでよく採用されてきた。これは、公式のプレミアムテーマ・プラグインマーケットが存在しないために仕方なく採用されてきたともいえる。この10年のトレンドを見ていると……

  1. 個人開発の小規模なプラグインが成功する(何億かの売り上げを上げる)
  2. 10人以上の開発規模になり中小企業規模になる
  3. プラグインの数が増えてアドオンマーケットを持つようになる(WooCommerce, ACF, EDD, Events Calendar)
  4. ホスティング企業に買収される(Automattic, WP Engine)

というのがビジネス的なゴールになっている。やはりWordPressビジネスでもっともお金が集まるのはホスティングであって、そこに今回の公式ディレクトリ騒動が関係してくると、予想できそうなのは「ホスティング企業によるプラグインの囲い込み」である。WordPressの発展を支えているのは、コアだけでなく、コア機能を補うようにして開発されてきたプラグインたちだ。公式ディレクトリの価値を毀損せず、そこにコントリビュートする開発者たちのビジネスを成長させ、利益をコミュニティにも還元する仕組みがあればよいのだが。この騒動は長く続きそうだ。

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