WordPressコントリビューターとコミュニティリーダーがオープンレターで組織運営変更を呼びかけ

2024年12月13日、The RepositoryというWordPress専門メディアでオープンレターが公開された。このオープンレターはChange.orgのようなサイトではなくThe Repositoryではじめて公開されたのだが、オープンレターへの署名は非公開(つまり匿名)とし、その署名自体の真正性を同サイト編集者Rae Moreyが確認するという形式をとっている。最近のマット・マレンウェグによるアカウント停止などによってキャリアが終了することを寄稿者たちが恐れているのがその理由のようだ。

Others raised concerns about the personal risks of speaking out, including potential repercussions such as being blocked from contributing to WordPress, which would impact livelihoods. In November, The Repository reported on this “culture of fear” and the potential career-ending consequences of opposing Mullenweg, particularly for sponsored contributors.

匿名のオープンレターなので、どういう人が参加しているのかは不明なのだが、コアコミッターやコントリビューター、makeチームのメンター・コントリビューターをはじめとするコミュニティメンバー20名(12月16日現在)が署名している。オープンレターはPDFで公開されているが、要旨は以下の通り。DeepLによる翻訳も末尾につけておく。

  • 不透明なガバナンスへの反対
  • マット一人がWordPressのシステム(メール、ブログ、フォーラム、プラグイン&プラグインディレクトリ)をコントロールできている状況への異議
  • コミュニティとの対話なしに重大な決定がなされることへの反対
  • WordPress Foundationの実行力が低すぎることへの異議
  • 上記についてマットが再考することを望む

これらの提案はマットも目を通したようで、コメントを残している。

Thank you, I have meditated. I’m happy to meet with people on specific proposals and specific changes, but it’s hard to engage or take action with this. I understand that people don’t like the current setup, and I’m very open to experiments to try different structures, but they need to work better for our users. This is too vague… be specific with names, what work they’ll do, and what outcomes we should expect in what timeframe.

具体性がないと話し合うことはできない、というコメントだが、具体的に指摘するとSlackからバンされてしまうのでは名乗り出ることは難しいというのが匿名の寄稿者たちの言い分だろう。この点に関してはマットがなんらかの約束をしない限り進展はないのではないか。

いずれにせよ、Automattic vs WP Engineの訴訟合戦でどちらの側につくかという単純な陣取り合戦とは関係なく、どちらの陣営にも属さないコントリビューターも現在の状況に不満を抱えていることは間違いないだろう。「WordPress 5.0でブロックエディターがいきなり採用された」という過去の事例に不満を持ち続けている人も多いはずだ。この結果、PHPにおけるRFC(Request for Comments)のような制度が採用されればそれはそれでコミュニティとしては一歩全身である。AutomatticやWP Engineのようなホスティング企業、ACFを使ってサイト制作を行うデジタル・エージェンシー、GoogleのようなWeb全体に関わる企業のそれぞれで思惑ややりたいことは違うだろうが、うまい落とし所を見つけられることを願いたい。


オープンレター翻訳(DeepL)

親愛なる WordPress コミュニティ: 私たちはあなたの味方です

WordPressコミュニティへ

プロジェクトリーダーでありAutomatticのCEOでもあるMatt MullenwegとWP Engineとの間の最近の騒動に鑑み、私たちはWordPressがコミュニティとして、またエコシステムとしてどのように運営されているかについての懸念を表明するために、この共同声明を書きました。

この書簡は、法廷での裁判においてどちらか一方を選ぶということではなく、むしろプロジェクトをより良い未来へと前進させるために、私たちが考える問題を表面化させることを目的としています。

私たちは

  • コアコミッターと貢献者
  • Make/WordPressチームのメンターと貢献者
  • その他、コミュニティで様々な役割を担っている人々

私たちはあなたです。

私たちの匿名性は、マット・マレンウェグや他の人々による報復に対する盾です。 私たちの名前とプロジェクト内での役割は、The RepositoryのRae Moreyによって独自に確認されています。

私たちは異議を申し立てます:

私たちは現状に異議を唱え、WordPressプロジェクトの現在の内部運営構造が、プロジェクトとそのコミュニティの健全性と持続可能性を脅かしていると考えています。

ガバナンスについて

  • 私たちは、WordPressのガバナンスモデルが不透明であり続けることに反対します。
  • Matt Mullenwegという一人の人間が、プロジェクトのウェブサイト、メールシステム、サポートフォーラム、コア、プラグイン、テーマのリポジトリ、更新システム、セキュリティツール、コミュニケーションチャンネル、その他の技術資産を含むすべての公式インフラをコントロールしていることに反対します。
  • 私たちは、コミュニティからの意見、助言、支援なしに重大な決定がなされることに反対します。
  • 私たちは、付与された影響力が獲得した影響力を覆すようなプロジェクトモデルに反対します。
  • 私たちは、WordPress Foundationが、PBCの子会社であるWordPress Community Supportを通じてミートアップやWordCampを管理する以外には、WordPressプロジェクトのガバナンスにおいて意味のある役割を果たさないことに反対します。

透明性について

  • 私たちは、コミュニティとその貢献者チームの努力について、マット・マレンウェグが誤った説明を続けていることに異議を唱えます。
  • 私たちは、WordPress Foundationがコミュニティの参加や監視を欠いたままであることに反対します。
  • 私たちは、WordPress商標のすべてのライセンスおよびサブライセンスに関する透明性が引き続き欠如していることに反対します。
  • 私たちは、推奨ホストの決定方法に関する透明性の欠如に異議を唱えます。

ダブルスタンダードについて

  • 私たちは、プロジェクトのリーダーであるマット・マレンウェグが、プロジェクトの行動規範の方針に責任を負わないことに異議を唱えます。
  • WordPress財団ではなくAutomattic社に雇用され、Automattic社のCEOであるマット・マレンウェグに対してのみ説明責任を負うエグゼクティブディレクターがWordPressにいることに反対します。
  • 要約すると、私たちは公式の利益相反ポリシーが存在しないこと、そしてマット・マレンウェグという一人の人物がこれほど長い間、複数の重要な役職(プロジェクトリーダー、Automattic社CEO、WordPress Foundation理事)を同時に務めることが可能であるという考え方に異議を唱えます。

私たちは次のように考えています。

  1. 私たちは、WordCamp US 2024以降、マット・マレンウェグとWordPressコミュニティとの間に、彼の行動に起因する大きな信頼関係の崩壊があったと考えています。
  2. 私たちは、BDFL(訳註・Benevolent Dictator For Life=優しい終身の独裁者、Linuxにおけるリーナス・トーバルズ)の自主運営モデルの不安定性がこれまで以上に明確になったと信じています。
  3. Matt Mullenwegによる、貢献者、コミュニティメンバー、一般市民に対する歯止めのない無礼な態度は容認できないと考えます。
  4. 私たちは、このような反対を押し切って WordPress に貢献し続けることは、最終的には私たち全員にとって個人的な決断であり、貢献が生活の糧となっている人々にとっては経済的な決断であると考えています。

私たちは一緒に働きたいと思います:

私たちはマット・マレンウェグに、これらの異論について熟考し、コミュニティーに配慮した解決策を提案するよう懇願する。

もしあなたが、私たちの異論に共鳴する投稿者またはコミュニティメンバーであれば、この手紙をあなたのネットワーク内で共有し、私たちの言葉を広める手助けをしてください。

私たちは皆、WordPressコミュニティの一員です。 私たちは共に立ち向かいます。

敬具

寄稿者一同


(以上、翻訳おわり)

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