ダミーテキストやサンプルもまたユーザー体験である

先日、WordPress.orgのSlackを覗いていたところ、「フォーラムの書き込みが違反ではないか」という作者からの申し出が上がっていた。この議論のやりとりが興味深かったので紹介したい。

まず、該当するレビューは”Strange sample data to import“と題されたもの。星一つがついている。

Snowflakes? Too bad. It could be a good theme. Stay out of politics if you want to sell a product.

“Snowflakes?” というフレーズの意味は取りかねたが、大意としては「政治的な要素を盛り込むんじゃない」ということなのだろう。

問題となったのは、下のカード型の部分と思われる

作者はこのレビューがいわゆる「クソレビュー」なので外してほしいということなのだが、Slackでは概ね次のような議論が行われていた。

  1. たぶんユーザーは “Obama hits back at ‘whacky’ Trump” という部分に反応したのではないか。
  2. スクリーンショットもユーザー体験の一部だ。
  3. なんで星一つなのかを聞いてみてはどうだろうか。”What?” とかではなく、もっと丁寧なやり方で。
  4. よって、レビューとしては正当なので、削除しない。

結局、作者は納得したようだったが、広くソフトウェアを配布するときに意識すべきことについて示唆的な一幕だった。

政治性は多様なので言及しないのがよい

日本においても「政治と野球の話はするな」という世間知がある。政治的な態度は人それぞれなので、不用意に話題に上げない方がよいのだろう。トランプ大統領を「バカ」と呼ぶのは日本における報道でも普通に行われているが、仮にも選挙で選ばれた大統領だ、支持者はたくさんいる。

WordPress利用言語の50%超が英語であることを考えると、そうした機微について詳しくない非ネイティブ英語話者は、無難に無難を重ねるぐらいでちょうどよいのかもしれない。もしマーケットを世界にしたいのなら、意識しておきたい点だ。

デモもユーザー体験の一部である

WordPressテーマやプラグインに限らず、ソフトウェア開発者全般にいえると思うのだが、「ユーザーは開発者と違ってまだそのソフトウェアを使ったことがない」という点を忘れがちだ。

したがって、説明やスクリーンショットなどが唯一の手がかりである。「まずは開発環境でインストールしてみる」という実験的なユーザーは少数派で、本番環境でいきなり乗り換えるに値するものだけをダウンロードするのだ。

この「ユーザー体験」に対する志向がないと、ダミーやデモがおざなりになってしまいがちだ。たとえどんなに優れたプロダクトであったとしても、ユーザーはそれがなんなのかを知ることさえできない。

Googleで「デモ ああああああ」と検索するとこうなる。

WordPressのマーケットで成功しているプレイヤーは、この「見せ方」がとても上手いという印象がある。筆者も開発者としては「readmeに書いてあるだろ?」と思ってしまいがちなので、他山の石としておきたい。

プラグインビジネスを成功させていてるPippinのサイトはよく作り込まれている。

以上、Slackを眺めていて興味深かった点を共有させていただいた。あなたのコメントをお待ちしている。

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