Web技術標準化団体であるW3Cは現在サイトをリニューアルするプロジェクトを進行中だが、そのCMS選定プロセスにおいて、WordPressが3つの候補から2つに絞り込むプロセスで落選したことをWP TAVERNが報じている。いうなれば準決勝敗退といったところ。残った2つはCraftCMSとStatamaticという商用CMSである。
WordPress落選の理由
リニューアルを担当するStudio 24はWordPressを3つのリストから落とした理由について、”On not choosing WordPress for the W3C redesign project“(WordPressをW3Cリデザインプロジェクトで選ばなかったことについて)で説明しているが、主にGutenbergがお気に召さなかったようである。
- Gutenbergはアクセシビリティに問題がある。
- クラシックエディターは将来的なサポートが約束されていない。
- (したがって)WordPressの継続性に不安がある。
WP TAVERNは記事内およびリアクションにおいて「そもそも参考にしているGutenbergのアクセシビリティ状況は古いもので、いまは改善されている」「他のCMSのアクセシビリティチェックちゃんとしたのか?」などのリアクションが上がっているが、興味深いのは「Gutenbergはユーザー向けで開発者目線ではない」というStudio 24の意見に対してコメントが盛り上がっている点だ。
More generally, we think this push to expand Gutenberg is an indication of WordPress focusing on the requirements of their non-technical user base as opposed to their audience of web developers building custom solutions for their clients
Stadio 24同様、いわゆるWordPress受託業界でこうした反応は珍しくなく、やはりGutenberg(ブロックエディター)によって開発難易度が上がったことに対する不満は多いようだ。とりわけ、カスタムフィールド製造業(ACF+クラシックエディタ)を続けている人からの反発は大きい。
もちろん、「ユーザー向けになっているが開発者フレンドリーではない」という指摘はGutenbergプロジェクトを強力に推し進めているAutomatticがユーザー向けサービスの企業なのだから半分当たっている。「半分」と筆者が表現するのは、技術障壁が上がったことが開発者フレンドリーではないといえるかどうか、疑問だからである。
いずれにせよ、カスタムフィールド製造業界のうち、ハイエンドな仕事をしていた人々(ACFなどを使って企業向けにCMSを作っていたプレイヤー)はWordPressに見切りをつけ、別のものに鞍替えするというトレンドは続くだろう。先日ポッドキャストで紹介したJAMstack vs WordPressは同じトレンドの別の側面である(ちなみに、このバトルはまだブログなどで続いている)
今後も突然のWordPressディスは起きうるので、愛好者は心しておきたいところだ。
ライセンスの問題
W3CのCMS選定において、同様にライセンスの問題が提起されている。3つに残ったCMSのうち、OSD互換性のあるオープンライセンスはWordPressだけで、他はプロプライエタリなライセンスである。GitHubにコードがあるので「オープンソース」ではあるのだが。
ちなみにWordPressとよく比較されるDrupalだが、こちらも「複雑だから」という理由で候補には入らなかったようだ。
Web標準化団体であるW3CがFLOSSを採用しないというのは時代の流れというべきかもしれないが、OSSに関わる人間としては少し残念な気もする。
コメントを残す