Reactを含むFacebookのオープンソースソフトウェアは Facebook BSD + Patent license という独自のライセンスで発行されている。これはBSDライセンスに特許条項が付帯しており、その内容はというと、「Facebookに対して特許訴訟を起こした場合はソフトウェアの使用を許可しない」というものである。
この威圧的な特許条項は以前から問題視されており、Apache Software Foundation を始めとする各団体がライセンスの修正を(特にReactに関して)求めていたのだが、ついにFacebookは「修正しない」という意見を公式に表明した。
どんなソフトウェアが影響を受けるかなどの詳細に関しては「Facebookの特許条項付きBSDライセンスが炎上している件について」という記事に詳しい。CounchDBやCordovaなどの著名なソフトも影響を受けるようだ。
WordPressに対する影響
さて、問題はWordPressである。WordPressの新しいエディタGutenbergはReactを採用しているため、Facebookに対してパテント訴訟を起こすことが難しくなる。
「Facebookと喧嘩しなければいいんでしょ」と割り切れるフリーランサーなどであれば関係ないだろうが、Facebookは他社のビジネスに進出するということをやっているので、これから新たなビジネスで大きな成功を考えている人にとっては、React、そしてそれを利用するGutenberg、さらに将来的にはそれらを同梱することを考えているWordPressを利用することはリスクになってしまう。
当然ながら、WP TAVERNを始めとするWordPress事情通たちはそのことを気にかけており、「ほらやっぱりVue.jsにすればよかったじゃないか」という意見も多く出ている。
なにより、これまでオープンソースソフトウェアとの良好な関係を築いて来たFacebookの冷淡な役人のような態度は、少なくない数の開発者を失望させたようだ。
Disappointed with Facebook's response to the ASF license issue. They're not the only big company releasing OSS. https://t.co/7YxoA2SMLP
— Nicholas C. Zakas (@slicknet) August 19, 2017
WordPressはReactから撤退するのか?
さて、ではWordPressは現時点での資産(Gutenberg)とともにReactを捨てるのだろうか? 現時点ではまだ議論がはじまったばかりで、すべては予断にすぎないのだが、判断材料としては次のものがある。
- Reactの利用を推進しているのは、おもにAutomatticである。CalypsoやJetpackなどもReactであり、WP TAVERNによれば、GutenbergプロジェクトのチーフメンバーはAutomatticに雇われているそうだ。その投資もかなり莫大な額になる。
- とはいえ、WordPressの共同創業者であるMatt MullenwegはOSSに対してクリーンな態度をとることが多い。
- React以外の選択肢としては以前お伝えした通りVue.jsがあり、コミュニティの少なくない人々がライセンス的にクリーンなVue.jsを支持している。
以上を踏まえ、CapitalPのメンバーが「WordPressはReactを捨てるか?」という問いに下した予想は……
といったところである。読者のみなさんはいかがお考えだろうか。希望的観測を含め、幅広いコメントをお待ちしている。また、ライセンスに関して一家言をお持ちの方のご意見もお待ちしている。
“Facebookライセンス問題はGutenbergにも飛び火するのか”への10件の反応
Reactが純粋なBSDライセンスの時点なら問題なかったですが、Patent Lisense条項がついたらGPL v2 第6節に抵触すると解釈できます。つまり、捨てざるを得ない。
コメントありがとうございます。なるほど、GPLに抵触するので、そもそも無理っていう話ですね。
少なからずのプロダクトがライセンス影響を受けるのだとすると、Facebook に対して集団訴訟で先手を打つ、というのはどうよ(ぶん投げ
法的には問題なし、道義的には問題ありという感じですかね。
今回はFacebookの開発陣と管理部(法務とか)の対立があったのではと勝手に予想しているのですが、大企業は大変だなぁと人ごとのように感じます。
ただし、こういう法律的に「難解な」問題が発生すると、オープンソースソフトを使う場合に決済者を説得するのがめんどくさくなりそうな予感がしますね。
法的にも問題提起すれば、国によっては認められるんじゃないか、と思うのですが、アメリカだと無理かな。
日本はOSSの判例もまだなかったと思うので、決裁権者の説得は大変です。はい。
私も Vue.js になるのだろうなと思いつつ、逆張りで Facebook が折れ、React が使えるようになるに1票入れておきます。聞く耳を持ってほしいですね。
ところで WordPress は何故 GitHub に移行しないのかを話していて、「GitHub も私企業のものだから完全に乗っかるのはどうよという判断では?」という意見を聞いてびっくりしました。言われてみれば確かにそうなのですが…。
現在のOSSの大半のコミットは私企業が私利私欲のために行なっていて、それでうまく回っているので、Facebookもセコイこと言わないでパテント条項削除してほしいですね。
今日のPodcastを聞いてて、ふと思ったのですが…
法的なことはともかく、Facebook側の意図(気持ち?)としては、昔マットがWPFを設立してWordPressを商標登録した時の状況とよく似てるなぁと。あの時も利を得るためではなく保護するためと説明がありましたが、「マットとAutomatticで利益を吸い取ろうとしてるんじゃないか?」とか散々言われましたよね。でも数年経ってもその言葉通り商標権で利益を1人得ているわけではなさそうですし、当時意図した通り「保護目的」の役割はある程度果たしている気がします。WordCamp開催時の色々な決まりは面倒だけど…
なので、意図は理解できる、法的にはグレーゾーン、実際は今後数年間Facebookがどう振る舞うか次第でReactの採用が変化してくるかも。WPFは非営利だけど、Facebookは営利なのでその違いは大きそうですが。
Reactをやめることが決まったようです。
https://ma.tt/2017/09/on-react-and-wordpress/
ナイスたれこみ! ありがとうございます。