WordPressからMediumへ、そしてまたWordPressへ

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データ分析・ビジュアライゼーションサービスを提供しているBaremetricsのブログから”Why we transitioned from Medium back to our own blog“という記事を紹介する。これはあるスタートアップ企業が自前でホスティングしていたWordPressからMediumに移り、そしてまたWordPressに戻ってきた話である。

要約

  • もともと$20で低品質のコンテンツを量産するようなSEOマーケティングをやっていたが、やめようと思った。
  • Baremetricsを始めるにあたって、マーケティングではすべてのプロセスを透明化し、なんでもかんでもシェアする ”share it all” の精神ではじめた。これはうまくいった。
  • だんだんMediumがよく見えてきた。トラフィックの量に頼るのではなく、コミュニティもついているからだ。
  • いくつかの心配事(ニュースレター購読者登録の減少、重複コンテンツ問題)はあったが、データがないので、WordPressの全てのコンテンツを移行することにした。そのときにはMediumがすごく良いものに見えてきた。実際にMediumで投稿するのはすばらしい体験だった。
  • 運用をはじめてみて、それほどアクセスがあるわけではないことに気づいた。自分のブログではトップの記事以外も3,000PV以上あったが、Mediumでは平均的な上位記事(※編注:そのサイトのトップ30ぐらい?)は500〜1,000PVしかなかった。ニュースレター購読者数は減少し、Baremetricsのコンテンツがバズることはほとんどなくなった。
  • WordPressにコンテンツを戻し、カスタムドメイン(Mediumに設定していたもの)を自前のサーバーに振り向け、すべて301リダイレクトした。これはすぐに元に戻った。
  • Mediumでコンテンツを配信することは諦めなたくなかったので、2つのルールでMediumの運用を続けた。WordPressに投稿後、二週間でMediumにリポストすること。インポートツールを使い、カノニカルURLを自分のWordPressにすること。

マーケティングよりの人が書いているので、筆者であれば絶対にやらないこと(外部ドメインに全コンテンツを預ける)をやっているのだが、なかなか面白い体験談ではある。それにしても、MediumがカノニカルURLを設定してくれるというのは、かなり太っ腹な機能ではないだろうか。

コンテンツプラットフォームとWordPress

Mediumはブログプラットフォームとして品質が高く、WordPressで自前ホスティングするよりもはるかに簡単にコンテンツを公開できる。とりわけ、そのエディタはMatt Mullenwegが自らアカウントをとって話題になったように、質が高い。実のところ、Gutenbergが目標としているのもMediumである。

だが、そのUXの違いについては、実は本質的にあまり変わりがない。とても美味しいカレーとまあまあおいしいカレーの違いでしかない。

コンテンツプラットフォームが自前ホスティングのWordPressと決定的に異なるのは、コミュニティの有無である。ただし、コミュニティと一口にいっても、そこに無色透明の人々がいるわけではなく、なんらかの偏りが存在する。複数のブログを集めたコンテンツプラットフォームとして、日本で認知されているものを筆者の独断によるコミュニティの性質とあわせて紹介する。

Medium

テック系、スタートアップ系が多い。総じて意識が高い。

Googleの説明文からも意識の高さが漂ってくる

はてなブログ

はてなブックマークや増田(はてな匿名ダイアリー)と合わせて「はてな界隈」というコミュニティを形成している。IT系(特にSI)が多く、「保育園落ちた、日本死ね」を産んだリベラル系の「はてな論壇」もある。はてなダイアリー出身(?)の著名作家も何人かいる。スタートアップ系もいるが、Mediumより常識人が少ない印象。

アメブロ

アメブロのコミュニティはおおきく2種類に別れ、芸能人とそのファンからなるコミュニティと、一般人のブログがある。後者では女性率(ママ率?)が高いのか、カテゴリーが他のプラットフォームとは異なり、上から「婚活・妊娠・子育て」「料理・グルメ」「ファッション・コスメ」「DIY・インテリア・暮らし」「闘病・介護」となっている。筆者も身内が癌になったとき、やたらとアメブロに遭遇した。また、特徴として「コメントがめちゃくちゃつく」という点が挙げられる。

note

創業者が元出版人ということもあり、漫画家、編集者などが集まる。最近、fladictこと深津貴之がCXOとしてジョインしたので、Web系も増えるかもしれない。運営会社の使命「クリエイターが活躍できる市場をネット上につくります」なので、クリエイターのビジネスに関する機能(定期購読、課金)がついている。

Qiita

プログラマ向けのブログプラットフォーム。Capital Pでもポッドキャスト内で「宮内が自分のWordPressではなくQiitaに投稿する問題」について何度か言及している。マークダウンで投稿できることがウリ。はてなほど殺伐としておらず、Web系の具体的なコードなどはQiitaに多く集まっている印象。

プラットフォームで活動すべきか、それともセルフホストすべきか

さて、それではプラットフォームvsセルフホスティングという問題を考えてみよう。

  • 上記で挙げたようなコミュニティが非常に魅力的であり、なおかつ自分の発信するコンテンツがそのコミュニティと親和性が高いとなれば、コンテンツプラットフォームで投稿することはアリだろう。また、プラットフォームのコンテキスト(=文脈)を読んで発信する情報を変えられる器用な人なら、バズを起こしやすいはずだ。
  • コンテンツを公開するだけでよいのであれば、プラットフォームの方がどう考えても楽チンである。ニュースレター購読、物販、独自広告などがビジネス上重要なのであれば、プラットフォームでできることは少ない。noteは例外的にコンテンツ課金が可能である。
  • エッジの効いた主張をしたい場合、プラットフォームでは垢BANの危険性がある。他者からの通報で凍結されるリスクは高まっており、この傾向は今後より強くなるだろう。

要するに、普通の表現活動をしており、なおかつコンテンツに対して特別な加工もせず、ビジネス上コンテンツがそれほど重要でないなら、プラットフォームでお手軽に始めるのがよいというのが筆者の意見である。Web上でコンテンツを公開することに真面目に取り組み、勉強するのも厭わないのであれば、WordPressで(他のCMSでもいいが)自前ホスティングをはじめるのがよいのではないだろうか。

ビジネスとしてのコンテンツプラットフォーム

さて、最後になるが、こうしたコンテンツプラットフォームというビジネス上の難しさについて言及しよう。

  • Mediumは素晴らしいエディターとコミュニティを持っているが、ビジネス上は別に成功していないようだ。創業者エヴァン・ウィリアムズが有名人(twitterの共同創業者)であるため、あっというまに有名サービスに成長したが、すでにレイオフも行なっているし、Medium Japanアカウントは閉鎖された。広告ビジネスモデルからの脱却が大きなミッションではあるが、それも難しいようだ。
  • Qiitaは昨年末に買収されている。つまり、直近の財務状況は赤字が膨らんでいる状態だったわけで、経営的にもより体力のある企業の傘下に入る必要があったのだろう。素人考えではあれだけプログラマーが集まっていれば求人で儲かると思ったのだが、なかなか難しいようだ。
  • 業務上知り得た知識なので具体的な名詞は出さないが、あるクリエイター支援をうたうプラットフォームも実は大企業の受託開発・メディア運用などを行なっていた。クリエイターのピンハネだけでは食っていけないのか、とショックを受けたのを覚えている。

要するに、コンテンツとコミュニティがあるだけじゃ儲からないということだ。

コンテンツプラットフォームに参加する側からすると、プラットフォームの継続性はかなり重要な問題である。コンテンツプラットフォームに依存している人は、ある日突然インターネットという荒野に一人取り残されても途方にくれないように、一度ぐらいセルフホスティングをやってみるのもいいかもしれない。

 

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この記事を書いた人

高橋 文樹

小説家であり、WordPress開発者。WordCamp Tokyo 2016のリードオーガナイザー。山梨に土地を持ち、DIYで家を建てている。小説と家づくりとWordPress開発の3種競技があれば日本代表有力候補。

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