2020年9月6日、WordCamp 男木島 2020 のオンライン開催が無事に終了した。50名を超えるボランティアによって運営され、個人スポンサーを含む430人が参加登録した。映像配信班によると、同時に実施されたYouTube配信の同時接続数は常時100人以上おり、201人が最大となった。
朝から夕方までの長時間の開催で、オフラインでのWordCampにまったく見劣りしない一体感や、また、オンラインならではの独自の体験も生み出されており、大成功のうちに終わった。
WordCamp 男木島は2018年の開催以来2年ぶり2度め。2020年に開催されるWordCampは男木島のみになりそうだ。
記事を書いている西川(男木島在住)は、パネルディスカッションのモデレーションや、セッションをもたせてもらったくらいです。妻が運営にはガッツリと参加しており、様子は聞いていた、Slack などは見える状態にはなっていた、という立場(半分参加者目線)から書いています。
Zoom, Remo, UD Talk 字幕, Miro, 参加者Slack, YouTube 配信など、各種ツールを使ってイベント体験を生む
イベントでは、参加者にとって、まとまりのあるカンファレンスとしてセッションを視聴し、他の参加者とコミニケーションを図り、離れていても同じ時間を過ごしているんだという体験を実現するため、様々なツールが使われた。
Zoom
開会式、各種セッション、閉会式、懇親会にはZoomが利用された。後述するUDトークとの接続の他にも、ブレイクアウトルーム(大勢の参加者を、少数のグループに分けてディスカッションをする機能)を利用したワークショップなどもあり、アプリケーションの力を使い切っていた。
Remo
Remo は、テーマごとに分かれた複数の「テーブル」を用意し、参加者同士が、動画やチャットでコミュニケーションをとることができるウェブツール。オンラインカンファレンスツールとしても使われることも多いが、今回は、イベント会場の「廊下」のようなイメージで利用されていた。
セッションが終了した後に、登壇者と話すことができたり、交流部屋、テーマごとに分かれた部屋があるなど、活発なコミュニケーションが起こっていた。
UD Talk
UD Talk は、音声を聞き取り、リアルタイムで書き起こしをしてくれるツールだ。今回は、ZoomとYouTubeへリアルタイムで音声が文字情報として送られるのとともに、同じテキストを利用した翻訳も実施された。事前に単語を登録しており、また、登壇者も「文字起こしビリティ」の高い話し方をしている人もおり、非常によい体験だった。
また、ボランティアのメンバーによって、機械によって文字起こしされた文字を、リアルタイムで修正して送ってもおり、驚かされた。
Miro
Miro はオンラインで利用できるホワイトボードツール。グラフィカルにものごとをシェアするために利用された。
参加者Slack
当日の参加者がテキストをメインに交流するための専用Slackチームが作られていた。ヘルプデスクや自己紹介、当日のボランティアメンバー連絡用などに利用されていた。
YouTube 配信
講演やワークショップ、YouTubeで同時に配信された。インタラクションに参加する必要がない人、そのコミットはできないけれども、家で子どもたちを見ながら参加する人にとっては、YouTubeを流しておくことで、参加することもできたし、拡散の効果もあったようだ。YouTubeに送られたコメントをセッションやワークショップにフィードバックする係やワークフローも整備されていた。
グラフィック・レポーティング 、ラジオ体操、休憩中のストーリー動画、開閉会式、ウェブサイトのリアルタイム更新
ツールの他にも多くの工夫がされていたので、紹介したい。ここでとりあげるものの他にも、細かな気配りや事前の準備が多かった。
グラフィック・レポーティング
各セッションやワークショップはグラフィック・レポーティングによって記録された。完成したグラフィックは当日の閉会式でひとつひとつ振り返りが行われた。イベントで起こったいろいろなことが、情報をきれいに分かりやすくまとめたイラストレーションとして、順番に紹介される様子は圧巻で、感動的だった。
全部で11名のチームが発足して、14枚のものができた。この後、公式サイトで公開されるそうです。
グラフィック・レコーディングという言葉に対して、なぜグラフィック・レポートという名称を採用したのか、また、グラフィックをシェアする際に代替テキストを設定する方法についてまとめられた記事「WordCamp Ogijima 2020 にグラフィックレポーターとして参加します – PRESS.mjmj」も合わせてお読みください。
ラジオ体操
これは、なんだったのだろう笑 イベント開始の10分前に、男木島、東京、香港など各地の実行委員が事前に用意したラジオ体操動画が流れていた。あと、休憩時間中にもなぜか流れていた。
休憩中のストーリー動画
なるほどと思ったのは、2018年のリアルイベントという文脈や今回のイベントのメインのメッセージなどが動画になっており、途中途中で流れていた。この動画を同時に見ている人がいるのだ、ということが感じられてよかった。
開会式と閉会式
同時並行で複数のセッションやコミュニケーションが進む場面が多いイベントだったが、最初と最後のセレモニーをはじめ、随所に一体感を生む演出があった。
ウェブサイトのリアルタイム更新
一日のプログラムが進む中、ウェブサイトのトップページがリアルタイムに更新されて、今何がどこで起こっているのかが分かるようになっていた。セッションごとに、多くのURLがあり、ツールも複数あるなかで、迷子になる人を減らす仕組みだった。
英語併用と多様性スピーカートレーニング、インタビュー動画
この他の特徴として、事前の告知や当日の案内の多くの部分が英語に翻訳されていた。英語のセッションやワークショップも用意されており、オンラインイベントの空間だけではなく、言語も超える工夫としてとてもよかった。私がファシリテーションを務めたパネルディスカッションでも、イタリアからの参加者を含めて、国内外からの視聴者がおり、質疑応答なども発生して楽しかった。
多様性スピーカートレーニング
過小評価されているグループに所属しており、「自分が人前でセッションをするなんてそんな・・・」と思っている人たちに、価値あるトピックの見つけ方、それをセッションにする方法、スライドやプレゼンの練習などをするプログラムが、多様性スピーカートレーニング。準備期間中にこのトレーニングが行われ、その結果として、複数の登壇者が講演をしていた。
オンラインのコミュニティー・イベントの価値について
私のFacebook画面の広告は、いまやウェビナー、ウェブセミナーの告知広告で埋まっている。デジタルマーケティングやDX領域のことをたくさん調べたりしているので、いつのまにか、仕事のできる人たちが笑顔で知見を提供してくれるよバナーが毎日、たくさん並んでいるのである。そして、実際にいろいろ勉強させてもらっている。これは、以前にはなかった。
では、WordCampと似たような、コミュニティーでひろく行われてきたカンファレンスにとって、オンラインで実施することの意味とはなんなのだろうか。知見の共有、ネットワーキング、スポンサーブースなど、いろいろな価値があるだろうが、そもそもの体験として、一日を同じテーマで過ごす、一堂に会する一体感、そして、運営者や参加者からにじみ出てくる熱量といったもの。私は、こうした目に見えない、広告もされない価値があると思う。そして、長尺、一体感、熱量を、オンラインでここまで実現することができることを目撃することができてよかった。私は、WP ZoomUPというオンラインでの勉強会を2年間、高い運営クオリティで続けていく様も見てきたし、多くのオンラインイベントにも参加しているオンラインイベントのツウであると思っているが、こんなことができるとは想像していなかった。運営はすべてボランティアによって行われていた。準備・告知期間中には、各班のインタビューが出ていた。インスタグラムにも工夫が多かった。当日だけではなく、一連の流れがストーリーを持つひとつのイベントだったのだと思う。
ここから先は、Capital P のメンバーになっている方限定ですが、我が家で閉会式に参加している私達の家のシーンです。
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