WordPressの生成AI活用にはホスティング事業者がキーファクターとなるか

WordPressにAIチームが誕生したことは以前お伝えしたが、WordPress6.9のリリース後、7.0のロードマップについて議論している現在のフェーズにおいて、そのAIチームがWordPressの将来像についていくつか記事を発表している。“AI as a WordPress Fundamental”や“AI for WordPress Hosts”などがそうなのだが、WordPressの機能の中核にどうやってAIを位置付けるか、という内容が主なものだ。

すでに開発を進めているWP AI Clientをはじめとするツール群は早ければ7.0でプロポーザルに含まれる予定とのことであり、おそらく7.0移行のバージョンは「AI機能」が重要な関心ごととなるだろう。WordPressはセマンティックバージョニングではないが、なんだかんだメジャーバージョン部が切り替わる時に大きな変更がなされることが多い。

いまのところ、生成AIモデルとのコミュニケーションレイヤーは開発が進んでおり、MCPサーバーやAbilities API(このプラグインがなにをできるか説明する)などといった共通仕様のほか、APIのリクエスト層も抽象化されている。具体的には、下記の通り。

$$image = Ai_Client::prompt( 'Create an image that beautifully reflects this post content' )
  ->with_text($post_content)
  ->generate_image();

プラグインおよびコアの開発者は「どのモデルを使用するか?」「そもそもWordPressにAI機能は存在しているのか?」を気にすることなく、生成AIの機能を利用することができる。

さて、そうなると何が問題になるかというと、生成AIのトークン利用料である。コア機能に生成AIが前提となってしまうと、WordPress自体が「OpenAIのCMS実装」のような感じになってしまう。そこでAIチームのJason Adamsが提唱するのは、「ホスティング企業によるサービス費用への組み込み」である。そもそもMySQLデータベースだって無料で使えるわけではないのにWordPressはデータベースが必須なのだから、生成AIが必須でも変ではない、という主張だ。ホスティング企業がバルクで支払えばトークン利用料も安くなるし、という主張には一理ある。そもそも、現在の実装でよくみられる「生成AIのAPIキーを入手して管理画面でペースト・保存する」という仕組みではリテラシーの高い人しか使いこなすことができない、つまり「オンボーディングに問題あり」という指摘には納得感がある。

AIチームは開発者とホスティング企業に向けての案内をSlackで継続的に続けていくようだ。開発者たちにはAPIの利用方法を、ホスティング企業にはモデルの提供方法を案内していくのだろう。が、これはけっこう踏み込んだ提案であり、関わるプレイヤーたちのビジネスモデルに音頭をとっていく姿勢にも見える。要するに、「〇〇サーバーでWordPressのサイトを使ったらAI機能も自動でついてくるようにしましょうね」という提案だからだ。

ただし、AIチームのJason AdamsがAutomatticの従業員だということを考えると、なんとなく「自社のビジョンをコアに実装しているだけでは?」という気がしないでもない。もちろん、開発者やホスティング企業にとっては現在の状況は「ピンチでチャンス」なことは確かなのだが。

ちなみに、WordPressというオープンソースが無料で使えない機能をコアに実装することへの抵抗はコメント欄でもすでに出ている。

Will there be appropriate filters to disable this, and to prevent accidental use of any such features? I know I sound like the living embodiment of the Old Man Yells At Cloud meme, but I have serious ethical and legal concerns about generative AI. 

(この機能を無効化したり、誤って使用されるのを防ぐ適切なフィルターは用意されるのでしょうか?「クラウドに怒鳴る老人」ミームの生き写しのように聞こえるのは承知ですが、生成AIには深刻な倫理的・法的懸念があります。)

David E. Smith

否定的なコメントをしているコア・コミッターもおり、一枚岩とは言い切れない状況だ。ただ「じゃあ他になにをするの?」といわれてもブロックエディター登場の頃のような大目標は見当たらないので、WordPress 7.0は生成AI搭載CMSとしての道を邁進することだろう。アンチ生成AIでない人はこのビッグウェーブに乗り遅れないようにしたい。

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