2017年6月の終わり頃、WooCommerceはサブスクリプション(定期購入)の50%値引きを終了したのだが、それにともなってちょっとした炎上になったことをWP Tavernが報じた。
問題点としては「ユーザーに事前の通告をすることなく値引きを終了した」ということで、コメント欄は賑わいを見せているのだが、それに対し以前 Capital P でも紹介した freemius が考察記事 “The Do’s And Don’ts of Renewals Discount for WordPress Plugins And Themes, Following The WooCommerce Blunder” をあげて分析して見せているのだが、その内容がなかなか興味深い。
WP TavernはWordPress専門メディアなので読者も多岐に渡るのだが、プラットフォームビジネスを展開する feemius の主な顧客はプレミアム・テーマ、プラグイン作者なので、上にあげた記事のテーマもズバリ「WooCommerceの失敗に学ぶサブスクリプションの値下げ戦略」となっており、小気味よささえ覚える。
freemiusによる分析
さて、feemius の分析によると、WooCommerceのサブスクリプション炎上についての分析は下記になるようだ。
- WooCommerceはWordPress業界におけるテーマ・プラグイン販売モデルのデファクトとなってきた
- 最近、プレミアム・テーマ、プラグインの販売モデルが売り切りからサブスクリプションに移行しつつある
- これはそもそも当たり前で、最初の一回しか収益を得ることができないとなると、サポートをすればするほど赤字になってしまう
- 持続可能なビジネスモデルとして、サブスクリプションが普及しつつある
- とはいえ、値上げを断行しなければならないときもあるのだが、その場合は既存ユーザーの価格帯には手をつけず、新規ユーザーに対してだけ値上げをすれば、少なくとも炎上は避けられる
どうだろう、かなりプラグマティックな分析ではないだろうか。
拡大の夢の終わり
WordPress業界のビジネスモデルがサブスクリプションプランに移行しつつあるという現状認識とは別に、最近筆者がとみに感じることなのだが、最近のテック業界のサービスでは、フリーミアムモデルの隆盛にかげりが見られ、収益化の段階に入っているように思える。
以前、筆者が別のブログ記事でも書いたのだが、2005年ごろから「無料」という驚くべきビジネスモデルを掲げるサービスが登場した。なぜそれが成り立つのかもよくわからないまま10年以上が過ぎ、生き残っているフリーミアムモデルはかなり少なくなった。
その数少ない例外がDropboxやGithubなどで、現在の多くのサービスは「最初の一ヶ月無料」となっている。そして、そのどれもがそれほど安くない。GithubやEvernoteでさえ、実質的に値上げの方向に舵を切っている。これはそれぞれのサービスが収益化の段階に入ったというだけでなく、時代がそうさせているのだと、筆者は感じている。
おそらく、フリーミアムビジネスモデルが登場したとき、その眩しさを支えていたのは、Webが拡大していくというその期待——幻想と呼んでもいい——だったのだろう。
これはWordCamp EUでも感じたのだが、今現在は、オープンなWebがその成長を鈍化させる一方、Facebookのようなアプリが展開するクローズドな空間がきらびやかに花開いている2017年なのだ。そして、「アメリカファースト」や「都民ファースト」という言葉が当たり前に流通する2017年でもある。ここまできて、私たちは夢を見ていたのだと、はじめて気付かされる。
そして、私たちは夢から醒めたあと、サブスクリプションを継続するかどうかについてメールを注意深くチェックしなければならないし、自分が売るものに関しては少しでも自然にユーザーから多くの金額をせしめなければならないのだ。ああ、こんなことって。ああ、インターネットって。
価格¥2,000
順位196,757位
著クリス・アンダーソン
監修小林弘人
読み手小林弘人
翻訳高橋則明
発行NHK出版
発売日2009年11月21日
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