今年のWordCamp TokyoやWordCamp Osakaに参加された方はご存知の通り、あらゆるジャンルのミートアップにはアフターパーティー、つまり懇親会がつきものである。たとえば、今年のWordCamp Tokyoでは、TK Shibuyaというクラブでアフターパーティーが開催された。ちなみに、このTKとは「ちとせ会館」の略であり、筆者が大学に入学した20年前はきったない居酒屋が列挙し、安いサワーとゲロの匂い、そしてそのゲロを踏んですっ転ぶ上げ底ブーツの黒ギャルに満ちていたビルの名称だ。それがいまやすっかり小ぎれいなビルに代わり、隔世の感を覚えたものである。
今年のTokyoがクラブイベントだったこともあり、「パリピ」と縁のない草食系ギークたちは肩身の狭い思いをしたことだろう。しかし、AWSの大イベントre:InventのDJパーティーと比較すれば、可愛いものである。
こうした「公式パーティー」の華やかさとは別に、世界の大きなWordCamp(といっても、WordCamp EuropeとWordCamp USぐらいだが)では、個別のパーティーが開催される。
個別のパーティーとは?
大規模なWordCampに行くと、公式のアフターパーティーももちろんあるのだが、開催期間3日間のうち1日目や3日目には、様々なパーティーが開催される。
たとえば筆者の思い出としては、2016のUSでShifterのパーティーやオーガナイザーとのパーティーに参加した。オーガナイザーと一緒に行ったフィラデルフィアのカラオケで、全然知らないオーストラリア人のおじさんがなぜか混ざっており、しかも歌がめっちゃうまかったことをよく覚えている。「この人誰?」という空気のまま一時間ぐらい過ごしたことはいい思い出だ。WordPressのWも知らないおじさんがよくもまあ混ざったものだと思うが、アメリカとはそういう国らしい。
また、2017のヨーロッパでは、パリのそこかしこでパーティーが開かれており、FreemiusやHuman Madeなどのパーティーに参加した。Feemiusのパーティーの喧騒につかれ、街角でタバコをすっていたら、「タバコをくれ」といってきたサーファールックのおじさんがTheme Forestのめっちゃ偉い人だったことを今でもよく覚えている。
そして、これは日本人からすると驚くべきことなのだが……1円も払っていない。なぜかわからないのだが、誰かが奢ってくれたのだ。もちろん、これはなんの意味もなく0円だったのではなく、それなりに意味があってのことだ。
コミュニティ・マーケティングという言葉をご存知の方なら分かる通り、自分たちのサービスを好きになってもらうことは容易なことではない。パッとみてすぐによさがわかるものは稀だ。そうなると、サービスを知ってもらわなければならない。そのためには当然マーケティング・コストがかかるわけだ。たとえば、1クリック600円のリスティング広告を出すぐらいなら、4,000円の飲み代を奢って3人に1人の顧客を獲得した方が、はるかに低単価である。それがクラウドホスティングならば、なおさらのことだ。筆者の運営する株式会社破滅派でさえ、自社サービスのためだけに年間50万円ぐらいを払っているわけで、LTV(Life Time Values=顧客生涯価値)を考えると、筆者はAmazonの人に100回ぐらい飲み代を奢ってもらってもおかしくない。
そういうわけで、どの企業も、意味なくTシャツを配っているわけではない。中の人と友達でなくても、見込み顧客だったらパーティーに呼んでもらえる。もしUSやヨーロッパのWordCampに行く機会があったら、ブースで熱心に話を聞いてみよう。くれぐれも、Tシャツやステッカーを指差して”Can I take this?”とだけ発音し、そっけなく去ったりしないように。
価格¥119
順位117,950位
著辻 仁成
発行新潮社
発売日1999年8月1日
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