WordCamp Hong Kong 2019 開催レポート

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Capital Pを御覧の皆様、こんにちは。香港暮らし11年になる日本人の河野千秋と申します。この度10月12日に開催された WordCamp Hong Kong 2019 に実行委員として参加しましたので、レポート記事をお届けしたいと思います。

10年ぶり2回目の開催となった WordCamp Hong Kong

ちょうど10年前、第1回目となった WordCamp Hong Kong は2009年4月5日に香港サイエンス・テクノロジーパーク(香港科技園:HKSTP)で開催されました。

当時のイベント公式サイトがこちらです。

(今とは違い翌年以降の開催を考えていないサブドメイン名。サイトのデザインからも10年という時の流れを感じます。)

hk.wordcamp.orgのキャプチャ画像

そして、WordPress 創始者である Matt Mullenweg さんも来港して登壇されていました。香港で State of the Word が語られていたとは驚きです。調べてみると、wordpress.tvに動画が残されていました。

Matt Mullenweg: State of the Word – WordCamp Hong Kong 2009

この第1回目のWordCampでは、“イケてるWPブログコンテスト”(Coolest WP Blog Contest)なるものが開催され、ファイナリストの中に、今回 WordCamp Hong Kong 2019 の実行委員長を努めた Ivan So さんの名前が掲載されています。

そして10年の時を超え、第2回目となる WordCamp Hong Kong 2019 が開催されることになりました。

香港で3年以上続いてきたコミュニティ活動

WordCamp開催のお話に進む前に、その下地となったコミュニティ活動について触れておこうと思います。

香港で初となるWordPress Meetupは、2016年11月にIvan Soさんを始めとする有志のメンバーによってスタートしました。初回は18人からはじまったMeetupは毎月1回のペースで開催され、3年以上継続した結果、この一年では毎回平均40〜50人が集まるまでに成長しました。参加者の属性は実に多様で、制作者やマーケッターだけでなくさまざまなビジネスに関わる人が参加しており、毎回Ivanさんを驚かせています。これまでのMeetupで人気の高かったセッションテーマはSEO関連で最高90人が集まりました。そのほかのセッションでは多言語プラグインや中国マーケット、WooCommerceなどが取り上げられてきました。

写真:Hong Kong WordPress Meetup の Facebookページより50人ほどの参加者が集まる様子

ちなみに、どうしてWordPress Meetupをスタートすることになったのかをこの機会にIvanさんに尋ねてみました。彼の会社では15年前からWordPressの案件を扱っており、直近の4年間に至っては100%がWordPress案件。自身の会社やチームがWordPressから享受してきたものを鑑みて、コミュニティに貢献しなければならないと思い至ったそうです。

WordPress15周年イベントがきっかけで、WordCampへ前進

Hong Kong WordPress Meetup の Facebookページより15周年記念イベントでの集合写真

昨年2018年5月27日はWordPressの最初のリリースから15年目の記念日であり、香港のコミュニティでもイベントを開催。これがIvanさんにとって多くのユーザーが集まるとても楽しいイベントになったという手応えから、WordCamp開催への意欲が強まったそうです。

なお、私自身が広東語を話したかったという下心だけで、昨年8月に「WordCamp香港やろうぜ!」的なLTをMeetupで披露させてもらったのですが、心やさしいIvanさんによると「千秋のLTが後押ししてくれたよ」ということでした。(私が広東語でLTする様子をご覧になりたいモノ好きな方はこちらからどうぞ。)

チームビルディング

さて、そんなわけでスタートした実行委員活動ですが、初期に集まったメンバーは10名ほど。最終的にメンバーは半分ほどになってしまいますが、ほぼ皆初めてのWordCamp実行委員として暗中模索での準備がはじまりました。香港の気質なのか、割と皆自分の担当領域は自己判断でどんどん進めていくところがあり、過程よりも結果を重視する香港らしい動きであると感じました。(興味のない領域はことごとくノータッチという一面もあるわけです。)和を重んじる日本のようなチームワーク感は少なかったものの、スピード感は十分にありましたし、お互いのタスクが進んでいくことを応援し合う空気がありました。一通りの実行委員活動を終えてみると、メンバー全員に「実行委員メンバーで参加できたことが喜ばしい。ぜひまた来年!」という反応があったことから、来年のより強いチームビルディングにつながっていく予感がしています。

香港の情勢不安定により懸念された開催

日本でも多く報道されている通り、3月ごろから始まった逃亡犯条例改正案反対デモが長期化・深刻化するなか、幾度となく中止が懸念されたものの、最終的にはあきらめることなく開催まで走りきろうという流れとなりました。「香港が深刻な時に”香港のわぷ〜だよ!”などといった空気を読まない記事を公開するのはいかがなものか」といった意見も内部からあがりましたが、大半の実行委員が情勢の不安定さに左右されること無く活動を進めるべき、という意思を持っていました。とはいえ、SNSの発信を含めて宣伝活動が消極的になってしまったことは否めません。私個人としても、香港で起きていることを整理して受け止めきることができず、大変心苦しい時期を過ごしました。(この心苦しさは今も続いているのですが、また別のお話ですね。)

現地スポンサー探しの難しさとファンデーションの有り難さ

2回目の開催とはいえ、10年ぶりのWordCampは地元香港にとってまるで実績のないイベントです。このため、実行委員が手分けしてさまざまな企業へアタックするも、なかなか良いお返事がもらえません。最終的にはやはり実行委員と日頃お付き合いのある企業さんの中からスポンサーが見つかったり、マイクロスポンサーのサポートをいただいたりで、少しずつできることが増えていきました。こういった香港の情勢の中でスポンサーしてくださった企業やマイクロスポンサーの方々には大変感謝しております!

最終的に一般チケットを100香港ドル(約1,400円)で販売し、10個のセッションをはじめ、ランチとソフトドリンク、フレッシュジュース、コーヒー、Tシャツ、トートバック、そしてアフターパーティ参加が含まれるという至れり尽くせりな内容となったのですが、このように贅沢なイベントにできたのは、前述の現地スポンサーやマイクロスポンサーを始め、WordPress Foundationとグローバルスポンサーによるサポートがあってこそでした。

そして7月20日にチケット販売を開始し、最終的な販売総数は130枚、来場者は103名となりました。決して大きくないWordCampとなりましたが、運営側の負担も大きくなく、関わる人たち全員が緩やかな雰囲気で参加できるイベントになったのではと思います。

会場は香港島南部のコワーキングスペース

香港といえば世界でもトップクラスで土地代の高いエリアであり、手頃な会場の決定にはかなりの時間がかかってしまいました。当初は無料での使用が見込める大学での実施も検討されましたが、そもそも申請できるのが開催2ヶ月前と、スケジュール的に厳しかったため断念。

そこで、会場候補となったのがコワーキングスペースでした。香港ではかつて工業ビルとして使用されていた多くの建物が、ニーズの変化により違う用途へと変わりつつあるのですが、その用途の一つにコワーキングスペースがあります。今回は、このコワーキングスペースの共用エリアを使用しての開催となりました。


写真:WordCamp香港 当日の会場、コワーキングスペースの共有エリアが賑わった。 photo by Simon Ho

会場のロケーションは香港島南部。香港中心地の金鐘駅から地下鉄で10分ほどで、近くには欧米人に人気のビーチリゾートや地元で大人気のテーマパークである海洋公園があり、デモで騒がしくなるエリアからは外れた位置にありました。

ランチや飲み物

会場周辺は工業ビルエリアということもあり、ランチの手配が必須でした。食べやすいベーグルサンドイッチに決定し、ベジタリアン向け・お肉・お魚の3種類を用意。リンゴやオレンジのフレッシュジュースボトルと一緒に提供。会場のシャレオツな雰囲気にもなかなかマッチしており、参加者の方に楽しんでいただけたのではと思います。


写真:ベーグルサンドイッチのランチボックスは、野菜・魚・肉の3種類を用意。 photo by Johen Redman

また、コワーキングスペースらしくパントリーゾーンがあり、スナック菓子やソフトドリンクの提供がしやすく、参加者はイベント開催中いつでもこれらを楽しむことができました。


写真:会場内では常にスナック菓子とコーヒー、コーラなどのソフトドリンクを提供。 photo by Victor K Nip

早くて安い香港の印刷サービス

印刷物が安く早く手配できるのも香港らしさの一つ。メインスクリーンの左右に配置した高さ2メートル・横幅80センチ、軽量タイプのロールアップバナーを例に挙げると、1つあたりなんと98香港ドル(約1,400円)で3営業日ほどで仕上がりました。日本のものと比べると印刷のクオリティはやや劣るものの、1日限りのイベントには十分な品質でした。


写真:スクリーンの左右に配置したロールアップバナー。 photo by 筆者

また、今回のマスコット「ドラコングわぷ〜」のフォームボードを用意してみたところ記念写真に大活躍したので、ぜひ次回以降も取り入れたいと思いました。こちらの価格は86香港ドル(約1,200円)と、先ほどのロールアップバナーと大差ない金額で、より一層ロールアップバナーの安さに驚きです。


写真:撮影に大活躍したわぷ〜のフォームボード。 photo by 筆者

そして、参加者全員に配布するネームバッジを兼ねたA6サイズのリーフレットの発注先として、少し欲を出して、さらに格安の印刷所に注文してみました。すると、連絡が行き違ったり、事前に注文しておいたパンチ穴が開いていなかったり、そのパンチ穴も手作業で開けるため位置が見事にバラバラ、受け取りの際に30分ほど待たされてしまうというなかなか日本では遭遇できない体験ができました。


写真:手配に苦戦した、首からぶら下げるミニパンフを兼ねたネームバッジ。 photo by 筆者

スピーカー陣

スピーカー公募は5月末から8月末まで行い、応募総数は26件でした。

1トラックで行ったセッションは10個。そのうち6つが広東語セッション、残り4つが英語セッションでした。Meetupでも広東語回と英語回を月ごとにほぼ交互で開催しているため、香港らしいセッションの言語構成になりました。

Meetup参加者には、デザイナーや開発者ではなく、WordPressユーザーが多く、そのような方向けとして、集客やマーケティングに役立つプラグインやSEOに関するものが、セッションテーマの多くを占めました。

実のところ、デザインに関するセッションも、アフリカ・ナイジェリアからの海外スピーカーの方にお願いしていたのですが、セッション日までに渡航ビザが下りず、断念。そのため、スピーカーの10人が全員、香港在住者となりました。

当日ボランティアの底力

当日の朝を迎えてまずはじめに驚かされたことが、当日ボランティアスタッフの器量の大きさ。お互い初対面のメンバーながら、実行委員以上に素早く現場を掌握して、どんどん現場の準備を進めてくれるという素晴らしい動きをしてくれました。「これ開封するんだよね。組み立てとけばいいんだよね。見たところステージで使うやつだよね。」といった具合に、こちらがモゴモゴと拙い広東語を呟いている間にサクサクと動いてくれたという有様でした。(広東語でこういった人のことを「識自動波」と言う)

会場が出来上がっていく様子をタイムラプス動画(20秒)でどうぞ。

受付に至っては、数人の来場者を一緒にこなした後は、私よりもはるかに素早くしっかりと、まるで手練れの実行委員のようにこなしてくれました。ランチタイムも率先して自分たちが早めにランチを済ませ、ランチボックスを配布する体制を整えてくれたりと、もう頭が上がらない状況でした。


写真:受付チーム、みんないい笑顔。 photo by Johen Redman

写真:当日スタッフが主体となって参加者を誘導しスムーズにランチボックスを配布する様子。 photo by Johen Redman

よくよく話を聞いてみたところ、一部の当日スタッフの方は日頃からよくボランティアでいろんな現場に参加しているため、慣れているということでした。自身の飲み物も水筒持参で確保しており「自分のことは自分でこなす前提で手伝いに来ているよ」という姿勢が、私にとってはとても新鮮な驚きでした。他にもパントリーコーナーで積極的にコーヒーを配ってくれたり、困っている人がいないか気を配ってくれたりと、至れり尽くせりでした。参加者の方が「あのスタッフよくやってくれているな」と感じたとしたら、それは全て当日スタッフのことで間違い無いでしょう。

アフターパーティ

アフターパーティの会場となったのは、セッション会場から徒歩5分の、コンパクトなホテルビルの23階にあるルーフトップバー。定員が70までという制限があったため、事前にセッション会場で希望者受付をしました。最終的に参加者は40名ほどと、グッと少人数に。その理由として、香港ではあまり打ち上げや飲み会という習慣が無いことや、晩御飯は家族と食べることが多かったり、そしてあまり遅い時間帯になるとデモの激化による地下鉄のサービス停止が懸念されたということがありました。

とはいえ、一日のイベントを終えて、高層階から眺めの良い景色を見渡してのアフターパーティは格別でした。参加者の方から直に感想を聞くことができて、実行委員、スピーカー、当日スタッフそして参加者がみんな距離の近さを感じられる時間になりました。


写真:開放的な眺めのルーフトップバーで賑わうアフターパーティの様子。 photo by 筆者

参加者の方から「こんな時だからこそ、このような明るいイベントを開催してくれて嬉しい」というフィードバックがあり、私にとって一番喜ばしいコメントでした。また、ぜひ来年もやってほしいという声もあり、ぜひ実現したいところです。

セッション動画を素早くwordpress.tvで公開

今回のセッション動画は人手の足りなさもあり、筆者がiPhoneと三脚を持参しての撮影に。そして、セッション日から2週間後には、セッション10個全ての動画をwordpress.tvで公開しました。その際、Languageに「Cantonese/廣東話」カテゴリーを新規で追加しましたよ!やったぜ。

そして2020へ向けて

Ivanさんによると、すでにWordCamp HK 2020開催の申請を提出したということで、次の運営メンバーにバトンタッチするまでに、少しでもコミュニティを大きくできるよう、これから1年も尽力して行きたいということでした。私もそのサポートの一助になれるよう出来ることに取り組んで行きたいと思います。


写真:WordCamp香港セッション後の集合写真 photo by Simon Ho

多大なるサポートをしてくれた日本人メンバーの存在

当日を無事にこなせた背景には、日本のWordPressコミュニティで活躍する多くの方々の存在が欠かせませんでした。スタートアップ時からメインメンターのように様々な相談にのってくださった高野直子さんと額賀順子さん。日本から足を運びマイクロスポンサーとしてもご参加いただき、香港メンバーを熱くしてくれたmt8さん。ご自身の結婚式を終えたばかりで、多忙な中足を運んで当日の映像撮影からアフタームービーまで仕上げてくれた清野奨さん。そのほか、気にかけてくれた皆様、サポートしてくださった皆様、この場をお借りしまして御礼申し上げます。ありがとうございました。

清野奨さん作のアフタームービーはこちら。

WordCamp Hongkong 2019 After Movie
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この記事を書いた人

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