WPTavernが報じるところによると、現在Automatticの提供するプラグインJetpackが「ガイドライン違反なのでは?」ということで批判を寄せられているようだ。ざっくり要約すると……
- WordPressのプラグインディレクトリで”backup”と検索するとJetpackが有料プランへの導線を表示する
- これはプラグインガイドラインの5条「お試し・プロモーションプラグインの禁止」に抵触するのでは?
- 他の開発者たちから「Jetpackを削除しろ」と批判が届く
といった状況である。プラグインチームは現在もこれがガイドライン違反か議論中とのこと。Jetpack自体にはすでにプルリクエストが送られており、次期バージョンからすでに有料プランに登録しているユーザーにのみ導線を表示する(したがってプロモーションではない)という変更を入れるようだ。
論点は主に以下の3つだ。
- なんでJetpack削除されないの?
- そもそもプラグイン検索画面がイケてないんじゃないの?
- モノリシックプラグインが優遇される仕組みになってない?
まず「なぜJetpackは削除されないのか?」という疑問。これについてはTavernがすでに回答を得たようで、プラグインチームはガイドライン18条を根拠に「たくさんのユーザーに使われているプラグインをいきなり削除すると影響が大きいから」と回答している。要するに、大手は優遇するということだ。これに対しては「Jetpack先輩、ガイドラインのギリギリをせめてどこからアウトか探ってるのでは?」という声も聞かれる。筆者は『スラムダンク』に登場する牧伸一の言葉「あいつは今 線を引いたんだ」という言葉を思い出した。
審判は今 フエを吹かなかった ファウルじゃないとな
つまり あれくらいのあたりなら これからずっと審判はファウルを取れない
今のをとらなかったんだから
これで魚住はチャージングの境界線を引いたんだ!!
『スラムダンク』
さらにYoastからは別の論点として「そもそもプラグインの検索結果画面での有効化済みプラグインの見た目がイケてない」というチケットが提案されている。現在は「有効」というグレーアウトされたボタンがあるだけだが、それだとプラグインでの検索コンテキスト(例・backup)が失われてしまうし、なにもできないボタンを表示してもユーザーはよくわからない、というわけだ。モックアップなども提示されている。ある程度大きなプラグインになるとユーザーがその機能のすべてを把握していないので、ユーザーの横恋慕を防ぐために何か目立つものを表示したい……というニーズがプラグイン開発元にはあるのだろう。
最後に、「Jetpackみたいなモノリシックプラグインが有利になってない?」という指摘もある。Jetpackはバックアップ、セキュリティ、ソーシャルシェア、サイトマップなどの様々な機能が一つに入ったパッケージ・プラグインだ。開発の定石としては単機能でシンプルなプラグインの方が堅牢な作りにできるとされているが、ユーザー体験としては「なんかよくわかんないけどそれを入れとけばなんとかなるプラグイン」にニーズが集まりがちなことは事実。カフェの店長であればなおさらだ。Jetpackはまさにそうしたニーズに答えるべく機能を拡張し続けている。その結果、様々な検索クエリで上位に入りやすくなっており、インストールの機会が増えるという良い結果を享受している。こうした環境で生存競争が続くと——ちょうど氷河期にマンモスのような巨大な哺乳類が栄えたように——膨大な機能をパッケージしたプラグインが最終的に生き残ることになる。それを危惧する声も上がっており、以前ブロックライブラリについて言及したが、プラグインというエコシステムにそもそも内在する矛盾があるのだろう。
これに関して、筆者はプラグイン同士の依存関係を解決する機能をコミュニティが提供すべきだと考えている。そうでない限り、結局は「いろんなプラグインの機能を把握するのがめんどくさい」というニーズは存在し続けるので、モノリシック・プラグインの優勢も変わらない。ちなみに「モノリシック」というのは「一枚岩」という意味で、複数の機能が密結合して分割できない状況をさす。Wikipediaにもある「モノリス」みたいなもののことだ。
というわけで、プラグインを開発する方などは、今回の騒動の帰結から今後の方針を占ってみてはいかがだろうか。
価格¥605
著井上 雄彦
発行集英社
発売日2018年8月1日
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