コモンズの悲劇とその解決法について――#wpdramaの裏舞台

herd of cattle in daytime

現在、WordPressでは共同創業者マット・マレンウェグとWP Engineによるバトル(#wpdramaと呼ばれている)が法廷闘争にまで発展し、解決には長い期間がかかることが予想されている。本稿ではこの問題の裏側にあるテーマを深掘りし、「果たして解決策があるのか?」という点を考察してみたい。

念のために断っておくと、筆者はWordPressを使ったWebサイトの開発に携わる人間であって、上記の問題に関する専門的知識(著作権法など)を持つ専門家ではないことをお断りしておく。

なぜ「コモンズの悲劇」だったのか

Capital Pでもお伝えした通り、WordPress FoundationはFive for the Futureという「WordPressの発展のため、それをつかってビジネスをしている人は5%をコントリビューションに捧げよう」というプロジェクトを開始した。このプロジェクト自体は一見良さそうなのだが、そのプレゼンテーションの中で以下の画像を用いて「コモンズ(共有地)の悲劇」が紹介された。

コモンズの悲劇

この「儲けばかり追求する人たちが共有資源を無計画に使い尽くすと無くなってしまう」という図式は非常にわかりやすい。善良な人は「なるほど大変だ!」と思ってしまうだろう。しかし、WordPressはオープンソース・ソフトウェアであり限りなくコピーすることができるので、共有地の水源とはそもそも異なる。果たして、このような危機意識は妥当なのだろうか?

実のところ、この「コモンズの悲劇」には著名な元ネタがある。ギャレット・ハーディンが1968年(!)に発表した“The Tragedy of the Commons”がそれで、論文はPDFなどで読むことができる。内容をざっくり説明すると、「自身の利益を追求する個人を仮定すると共有資源は枯渇してしまうので自由放任とせずに管理すべき」という内容だ。

この議論をそのままWordPressコミュニティにあてはめると、みんなが金儲けをしようとするとWordPressが枯渇しちゃうから誰かが「管理」しようね、と敷衍できそうだ。

さて、ハーディンの論文にもどろう。発表当時センセーショナルに受け止められたこの論文だが、すぐに批判もあった。

  • 私的所有(=企業などによる独占)や政府による管理は強権的である。
  • 実際の共有地は適切に管理されている場合も多く、現実を反映していない。

また、ハーディンの論文はその発表された時代(1960年代後半)についても留意が必要だ。1960年代は第二次世界大戦後のグレート・アクセラレーションの初期である。人類の総活動量アウトプット(=人口×科学技術)が飛躍的に増え、先進国を中心に「公害とか核爆弾とかヤバいんじゃないか?」という危機意識が共有され始めた時期である。実際、この頃にはポール・R・エーリック『人口が爆発する!』(人口過剰問題)やレイチェル・カーソン『沈黙の春』(農薬・殺虫剤の影響)などの、地球環境についての書籍が大ベストセラーになっている。ハーディンの論文はそうした大きなムーブメントの中での波頭の一つ、と考えるのが適切だ。環境問題の計測に関する指標の多くもこの頃に計測が開始されている。

なるほど、「コモンズの悲劇」という問題は存在している。しかし、それはそれとして、私たちWordPressコミュニティのメンバーは60年も前(ベルリンの壁崩壊もCovid-19も生成AIも知らない時代)に発表された論文の概念をもとに行動を決めてしまってよいのだろうか?

「コモンズの悲劇」の現在

現在は2025年である。1960年代に警鐘を鳴らされたように人類は無駄に増えてしまったのかもしれないが、総体として見ると非常に賢く、問題を解決あるいは改善し続けていることが多い。たとえば、「コモンズの悲劇」に関してもそれは同様で、ハーディンの提起した問題について答えを出そうと努力する人々がいたのである。

たとえば、エリノア・オストロムはその筆頭である。2009年に女性としてはじめてノーベル経済学賞を受賞したオストロムは「コモンズ研究」という何学とも分類し難い学際的な研究を行い、「コモンズの持続性」についてフィールドワークを伴う実証的な研究を行った。前述したハーディンの論文が単なる思考実験であり、ハーディン自身が実際の「牧草地」に行ったわけではないのと対象的なガチ感を持つのがオストロムである。また、「政府か市場か」という二元論に陥りがちな「コモンズの管理」について、コミュニティの重要性を発見してもいる。

オストロムの研究手法はフィールドワークとゲーム理論(例・囚人のジレンマ、チキンレース)を組み合わせたものであり、それなりに複雑ではあるのだが、本稿では単純化して伝えたい。まず、なんらかの共有資源コモンズがあるとする。たとえば、牧草地や漁場のようなものが想像しやすいだろう。

生成AIにつくってもらった「コモンズの悲劇」のイメージ

ハーディンは「再現なく資源を使い尽くす強欲な羊飼い」というモデルを想定するのだが、オストロムはフィールドワークによって現実にはそうでないケースが多いことを看破する。強欲な羊飼いも世話焼きな羊飼いも責任感が強い羊飼いも存在するわけだ。当然、羊飼い同士のルールも存在しており、町内会がそうであるように、相互監視や「貢献とペナルティ」によって自主的な運営がうまくいくケースも存在しうる。もちろん、成功例ばかりではなく、強欲な私有化によってダメになる例もあるし、単に誰も管理しなくなるためにコモンズが荒廃する例も存在する。

オストロムはコミュニティによる管理がうまくいくための要素として、以下の原則を挙げている。

  1. 明確な境界の設定 誰が資源を利用できるのか、コモンズの範囲が明確であること。
  2. 地域に適したルール 利用ルールが地域の社会・環境・経済条件に合っていること。
  3. 参加型の意思決定 利用者自身がルールの作成・変更に参加できること。
  4. 監視体制 資源の利用が監視されており、監視者はコミュニティのメンバーであるか、その信頼を得ていること。
  5. 段階的な制裁 ルール違反に対して段階的な罰則があること(軽微な違反には軽い制裁)。
  6. 紛争解決の手続き 利用者間の対立を安価かつ迅速に解決するための仕組みがあること。
  7. 外部からの認知 国家や外部の権威が、そのコミュニティによる自主管理を妨げないこと。
  8. 多層的な統治構造 大規模な資源においては、複数のレベル(地域・広域・国家)での統治構造が重層的に存在すること。

IAD(Institutional Analysis and Development) フレームワークという分析手法も提唱していて、コモンズ研究の中ではよく使われる(使われた?)手法のようだ。

By Anupmehra – Own work, CC BY-SA 4.0

オストロムの研究『コモンズのガバナンス』(1990年、日本語訳2022年)では、日本の地方における山林管理なども取り上げられており、なかなか興味深い。筆者もサーフィンをするので、「海にある波」というコモンズの管理方法についてポイントごとの違いがあるな、と実感することも多い。コモンズは管理方法によって栄えるところとそうでないところがあるのだ。

とはいえ、オープンソースソフトウェアはオストロムの研究にあてはまらないのでは、と考える人も多いだろう。たしかにオストロムが研究対象としたコモンズは漁場・山林・水資源などであり、物理的な場所を持たないソフトウェアにはあてはまらなそうだ。だが、そうした批判は1990年代からすでに出ており、知識コモンズという概念が誕生している。たとえば図書館がそうであり、デジタルアーカイブ構築の際にはこれらの知見が生かされた「コモンズ研究の実装」としてEuropeanaがある(西川開『知識コモンズとは何か パブリックドメインからコミュニティ・ガバナンスへ』勁草書房

EU支援のもと作られたデジタルアーカイブサイト

IADフレームワークを知識コモンズのために最適化させたGKCアプローチというものも誕生した。

Source: “Governing Knowledge Commons,” in Governing Knowledge Commons (Frischmann, Madison, & Strandburg eds., Oxford University Press 2014) at 19; originally published in Michael J. Madison, Brett M. Frischmann, and Katherine J. Strandburg. 2010. “Constructing Commons in the Cultural Environment.” Cornell Law Review. 95(4): 657-709. Adapted from Elinor Ostrom, Understanding Institutional Diversity (Princeton University Press 2005).

なぜGKCアプローチが手法として必要なのかについて日本語で読めるものとしては、西川開「デジタルアーカイブの 制度分析の方法論」が参考になるだろう。さて、GKCアプローチでは自然資源コモンズと知識コモンズの以下の点に着目している。

  1. 資源の特性 その知識や情報がなんのか(ソースコードは無限コピー可能、書籍は数に限りがある)、排除性(オープンソースは誰でも使えるのでほぼゼロ)、利用の競合性(牧草地は取り合いになるが、オープンソースは同時利用で困ることはない)
  2. コミュニティの特性 企業、開発者、利用者の割合や行動規範についてなど。レビューやフィードバックの体制、つまりガバナンスが重要である。
  3. フィードバックと成果 知識コモンズでは「使い尽くしてなくなる」ことはあまり問題にならず、「成果が得られないので誰も貢献しなくなる」という問題が多い。

そして、こうした知識コモンズの研究についてはすでに知見も多く、ローレンス・レッシグ(Creative Commonsの提唱者)などが2010年代以前(つまり、20年近く前)に多くの研究を発表している。

そうした観点から、すでにオープンソースのエコシステムとして成功例といえる事例も出てきている。

  • Linux Foundation 大企業がスポンサーしており、リーナス・トーバルズの長期独裁という問題は存在するが、安定したコミュニティ運営を築いている。
  • Apache Software Foundation Apache HTTP サーバー以外のプロジェクトも複数抱え、個人独裁型でも企業支配型でもない安定した仕組み。
  • CNCF Kubernetesをベースにしたコミュニティ。KubernetesはGoogleが開発したが、早い段階でCNCFとして財団型の運営にした。Aboutページをみてもクラウド関連大企業の社員がずらりと並ぶ。

本節での結論としては、主に2点。

  • 知識コモンズの研究はすでに20年以上の歴史があり、多くの知見があり、分析手法も存在する。
  • 知識コモンズにおける「コモンズの悲劇」とは、「資源の消費」ではなく、「停滞」である。

WordPress開発は今後停滞するか

知識コモンズの悲劇は停滞であると述べたが、具体的な例を挙げよう。典型的なパターンとしては分裂である。

  • OpenOfficeとMySQL 両者ともSun Microsystemsの所有だったが、OracleにSunが買収されたことによりそれぞれLibreOfficeとMariaDBに分裂。OpenOfficeはその後開発終了し、Apache財団に引き取られる。企業がコミュニティとのコミュニケーションに失敗した例。
  • RedisとElasticsearch AWSがクラウドサービスとして利用して儲けまくったことに反発した開発元がそれぞれライセンスを変更。RedisはValkey(コミュニティ主導)へ、ElasticsearchはOpensearch(AWS主導)へとフォーク。フリーライダー問題が分裂を招いた典型的な例。

どうもソフトウェアを管理する企業のガバナンス失敗によって分裂に至ってしまった。これは「あるある」のようだ。分裂すれば当然開発は停滞する。開発が停滞すればいずれは利用者もいなくなり、ソフトウェアは死を迎える。もちろん、Valkeyが今後停滞し続けるとは限らないが、分裂それ自体はよいことではない。

さて、WordPressの現状を見てみると、#wpdramaにはいくつかの論点に分解できそうだ。

  1. WP Engineのフリーライド問題。これは確かに存在している。実際、Weston Ruterをフルタイムコントリビューターとして雇う決定が #wpdrama なしに行われたかは疑問だ。
  2. マットのガバナンスの不透明性。今回のWP Engineに対する措置でAutomatticから多くの社員が去ったように、強権的な振る舞いはコミュニティの分裂を招いた。

実際、リポジトリをフォークしようという動きは出ているので、すでに分裂が始まってしまったと考えてしまって良いだろう。WordPressが停滞から逃れるには、セオリー通りに行けば、コモンズのガバナンスを取り戻すための変更が必要だ。

  1. フリーライダー問題を解決する。これまでいくつもの開発元とライセンストラブルを起こしてきた世界最強のフリーライダーであるAWSがオープンソースを支援するようになってきたので、WP Engineにも同様の変化が起きるかもしれない。WP Engineはあと3名ほどフルタイムコントリビューターを雇えば格好がつくのではないだろうか。
  2. WordPress FoundationからAutomattic(マット)の影響力を取り除く。とりわけ、意思決定とフィードバックのプロセスは見直しが必要だろう。現状、Automatticのコントリビューターは多いが、新規アイデアが採用されずに貢献をやめる非Automatticのコントリビューターは非常に多い。
    • PHPのRFCのように投票型の開発方針決定。
    • プロジェクトリードの選出基準を透明化する(投票制度など)

前者(WP Engine)に関しては変化の兆しが見られるが、後者(マットの権限移譲)は難しいのではないか、というのが筆者の見立てだ。というのも、Automatticの企業としての評価額に占める「WordPressを支配している」という優越性はけして小さくない。これは「WordPressはコミュニティのものではない」と筆者が主張しているのではなく、投資家からはそう見える、という意味だ。マットが自発的にその支配を手放すとは考えづらい。

その意味で以下の2つが衰退を食い止めるための重要なファクターとなるだろう。

  1. WP Engineによる歩み寄り。コントリビューションを増やすことでコミュニティの指示を得る。ただし、これはWP Engineの「改心」だけではなく、マットがそのコントリビューションを受け入れることも求められる。
  2. WP EngineとAutomatic以外のプレイヤーによるコントリビューションの増加。候補となるところは以下のプレイヤーに限られそうだ。
    • ホスティング企業。これらのプレイヤーは#wpdramaの趨勢を見てコントリビューションの量を変えることはありそうだ。たとえば世界最大手ホスティング企業のGoDaddyを見ても、235HということでWP Engineよりは多い(FftFで5倍)が、Automatticほど(1668H)ではない。ここは増加の余地があるだろう。
    • WordPressを強みとする制作会社のコントリビューション。ただし、10upHumanMadeXWPなどのWordPressのコア・コントリビューターを抱えるトップエージェンシーも、売り上げ規模で比較するとホスティング企業には見劣りするので、そこまでの増加は見込めないだろう。

WordPressでのコントリビューションでは、単純に費やした時間だけではなく、その貢献が無駄にならないかは非常に重要な観点である。以前紹介した公式リポジトリ代替のFairに参画する Scott Kingsley ClarkFields APIというAdvanced Custom Fieldsの公式統合版のような機能の開発に長年貢献しており、公式の手順も踏んでいたが、結局採用されることはなく、#wpdramaを経てコントリビューションを辞めてしまった。これは単なるバーンアウトということではなく、マットが関心を持たないプロジェクトは捨て去られる、という一つの事例である。「優しい終身の独裁者」モデルをよしとするとしても、その際のコミュニケーシン(採用されない理由の説明、またはSlackでの心無い一言)に問題がなかったかも振り返られてしかるべきだ。

また、コントリビューションの成果が公式なバッジのようになんらかのクオリフィケーションとして動作するのであれば、コントリビューションもしやすくなるだろう。ある制作会社で働くWordPressのエキスパートが自社のプロダクトに費やす20時間と同じぐらいの価値が生まれるのならコアコントリビューションしても構わない、と考える経営者は多いはずだ。これまでCodePoetという試みはあったが、これらはAutomatticのサービスWordPress.com VIPのPartnersとして、つまり「WordPress.comのVIPホスティングをうまく取り扱える会社」として統合されてしまった。これは似たような構造を持つDrupal(開発元のAcquiaが認定を行う)がDrupal Certified Partnerとしてもう少し公共性を押し出しているのとは逆のムーブだ。WordPressがとりえる方向性としては「技術認定資格」「貢献の厳密なランクづけ」の2つがあると筆者は考える。

以上、WordPressの開発が停滞した場合にその対策になりそうなケースを考えてみた。ここで挙げた対策はいずれも知識コモンズの重要なファクターであるフィードバックと成果にフォーカスしている。貢献が増えない原因は「やる気がないから」「悪意があるから」ではなく、シンプルに「貢献したいがお金や時間や能力やそられすべてを無駄にするかもしれない勇気がなくてできない」のだ。

無能で十分説明されることに悪意を見出すな

Wikipedia: ハンロンの剃刀

WordPressの支援は増やせるか

とりあえずいま「お金や時間の問題で貢献を増やせない」という問題が存在しているとして、では、お金がうなるほど余っているところから分けてもらえないか、と考えるのはどうだろう。お金があればフルタイムコントリビューターを雇える(=時間の問題も同時に解決)し、実際に他のOSSではそうした人々(PHP Foundationの例を参照)は存在する。本節では成功している財団型の運営を参考にして、シミュレーションしてみたい。

実は成功している財団の多くはMicrsoftやGoogleなどの超巨大テック企業(GAFAM)の支援を受けている。つまり、フリーライドを解決しているのではなく、「フリーライドも多く発生しているが、それが気にならないほどの支援がある」とも言えるだろう。Linux, Apache, Kubernetesなどはいずれも基幹技術であるため、巨大テック企業にとってはインフラ投資のような捉え方ができる。

その一方、WordPressはWebの40%で使われているとはいえ、その主要なスポンサーにGAFAMはGoogleぐらいしか見当たらない。 しかもそのGoogleはコアコミッターのスポンサーを減らしたばかりである。そうなると、超巨大テック企業がWordPressを支援して財団を強化する未来はなさそうだ。

ここでどのような形態の企業ならば「WordPressに投資してもいい」と思うだろうか、という点についても考えてみたい。

まずはホスティング企業である。WP EngineもAutomatticも主要な売り上げはホスティング事業である。ただし、これらの企業はすでにそれなりにスポンサーしており、GoDaddy, Pantheon, DigitalOceanなどもすでに支援を行っている。世界的に見てもそれなりに大きい日本のホスティング企業(さくらインターネット、X Server)は日本のコミュニティをサポートしている。つまり、伸び代があまりない印象だ。AWSやGoogle Cloudなどのより大きな事業規模の会社からの貢献が目立たない理由についてはよくわからない。AWSで動いているWordPressはとてつもない数になるはずだが。

続いて、ユーザー企業である。たとえば、メディアサイトなどで名だたる企業がWordPressを使っているのだが、この事業形態は望み薄である。というのも、筆者は以前、日本のとある大企業のメディアサイトに携わっていたとき、「WordPressを使ってビジネスをしているのだからスポンサーになってもらえないか」と打診したことがあるのだが、「WordPressを使ったのはそちら(制作会社)の決定なのだが、なぜこちらが追加でお金を出さないといけないのか」と返されたことがある。もちろん、筆者のアプローチ方法が間違っていた可能性はあるのだが、一般的にこうしたメディア企業では「名前貸しぐらいならさせてあげてもいいけど金銭的な支援はしない」という反応が多い。大学などの学術機関は「専門知識を持つ人がコミュニティに参加してくれる」「若い世代にWordPressを認知させてくれる」などの広い意味での貢献は期待できるものの、金銭的な支援までは期待できないだろう。とりわけ、日本の大学はどんどん予算を削られているぐらいなのだから。

上記以外でスポンサーになりそうな企業はなんだろうか? 条件としては「一定以上の売上規模と利益率があり」なおかつ「WordPressが発展することで利益を受ける」企業だ。筆者がざっと考えてみたのは次の通り。

  1. CDN企業: CloudFlareやAkamaiなどのCDN。これらはWordPressが発展した方が顧客になる可能性が高い。CDNの場合はアクセス数が多い巨大なサイトほど良い顧客なので、WordPressのセキュリティ・高可用性に対策するコントリビューターを雇うことは理にかなっている。
  2. 周辺サービス: Algolia(検索)、Cloudinary(画像最適化)などのサービスも同様にWordPressの発展で得をする企業だ。これらの企業はすでにプラグインを公開しているが、コアへのコントリビューションも投資効果を得られる可能性がある。
  3. CRM企業: SalesForceやHubSpotなどのマーケティングツールを提供する企業は、WebのインターフェースとしてWordPressを採用することができる。フォーム統合などはすでにプラグインとして公開されているが、アセット管理などが特殊な要件なので、ここにコントリビュートすることは企業として理にかなっているだろう。
  4. 生成AI企業: 検索エンジンの時代から生成AIの時代へという大きな移り変わりを経験しているいま、近い将来に生成AI企業がビッグテックとしてWordPressに投資する未来があるかもしれない。AI Building Block for WordPressも始まったことだし、この分野は今後も注目だ。

ざっと考えてみたが、もし読者からアイデアがあればぜひコメントでもお知らせいただきたい。なんにせよ、「GAFAMほどではないがそれなりに規模の大きい企業から支援を集められれば財団としては成功するのではないか」というのが本節の趣旨である。もちろん、そのためにはガバナンスの改善が必要である。

まとめ

以上、現在進行形の#wpdramaの裏側で進行している「本当の問題」について筆者が解決策を考察してみた。繰り返すが、筆者はこうした問題の専門家ではないので、ご意見があればぜひコメントをいただきたい。いまWordPressに求められているのは次のものだ。

  1. 透明性の回復(意思決定フロー、資金の用途、貢献量の可視化)
  2. 制度の整備(資格/紛争解決)
  3. 資金の多元化(中堅インフラ+関連サービス企業)

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください